では、なぜ、この人は好きな農業を辞めなければならないところまで追い詰められたのでしょうか。

 それは、研修に入った農家の選定を間違えたからです。

 その農家は、もちろん「農家」でした。しかしながら、その農家は農業生産だけで生計を立てているわけではなく、アパートなどを多数持ち、不動産所得を上げていたのです。

 そのことをわからずに、見た目に余裕のある農業生活のスタイルだけを見て研修先として選んでしまったのです。そのやり方を素直に学んで独立しても、その農家と同じように余裕のある経営になるはずがありません。

 これから農業を始める人に、果たして不動産所得はあるのでしょうか。地代を払わなくていい畑があるのでしょうか。つまり、農業を行う際の条件がまったく違っていたのです。

 これは極端な例ですが、そのようなことがあるので注意が必要です。

研修先選びで
その後の成功の50%が決まる!

 成功している人は、必ずと言っていいほど、農業でしっかり生計を立てている農家を研修先として選んでいます。できれば、研修生が少ない、もしくはいない、プロの農家を研修先に選ぶと、経営の実態がわかっていいと思います。

 研修生が多くいる農家は、その経営者の魅力的な考え方や特別な技術があるから、それを習得するために多くの人が集まっています。

 もちろん、そういった技術や考え方を習得することは必要です。しかし、農業は労働集約型の産業であることを考えたときに、そこで技術を身につけたからといって経営で成功するとは限りません。

 なぜなら、研修をした人が独立したときに、その人を慕って研修に来る人はまずいないからです。