何度でも強調したいことは、英国では、キャメロン政権が「解散権」を自ら封印して、5年間という期間を確保して財政再建に取り組んだことだ。そして、国民に財政再建の意義を理解する時間を与えることになったことである。

 これは、とにかく「選挙が多すぎる」日本の政治とは大違いなのである。日本でも、時の政権が財政再建策を打ち出すことは多い。だが、選挙から選挙までの間があまりに短期間のため、国民がその重要性を理解する時間がないまま、選挙に突入してしまうことになる。そうすると、政権は、目先の選挙に勝つことが第一だ。とりあえず財政再建を脇において、景気対策を打ち出さねばならなくなる。その結果が、際限のない財政赤字の拡大なのである。

 また、日本では「消費税」は時の政権にとって「鬼門」となってきた。大平正芳内閣、竹下登内閣、橋本龍太郎内閣、麻生太郎内閣、野田佳彦内閣と「消費税」に取り組んだ内閣は、国民の理解を得られずことごとく選挙に敗れてきた。それに対して、英国・キャメロン政権が、財政再建に5年間取り組み、遂に総選挙で勝ち切った事実が、日本政治に与える示唆は小さくない。とにかく日本では、財政再建という不人気だが重要な政策に、政治家がじっくり取り組み、国民がその重要性を理解するための時間が必要だ。

「政治が多極化する時代」における
小選挙区制の優位性

 今回の英国総選挙に関して、日本では「英国二大政党制崩壊」という論調が目立った。「英国の政治が多極化し、求心力が失われており、小選挙区制下での二大政党制は民意を汲み取る仕組みとして機能不全を起こしている」ということを、日本における「小選挙区制批判」「中選挙区制へのノスタルジー」の文脈で主張する識者・メディアが少なくなかった。だが、ここで明確に反論したい。今回の英国総選挙が示したことは、「政治が多極化する時代こそ、小選挙区制に優位性がある」ということだ。

 小選挙区制に対する代表的な批判は、「少数意見を切り捨てる」ということだ。小選挙区制では、選挙区で1位になった候補者だけが当選し、たとえ1票差の接戦でも2位以下はすべて落選となり死票だらけになる。これが「民意の反映」という点で疑問を呈されることになる。例えば、日本の2012年総選挙では、自民の獲得議席数が、比例代表では定数の3割程度なのに、小選挙区では定数の8割を占めた自民党が衆院選で獲得した圧倒的な議席数が、民意と乖離していると批判されてきた(第50回を参照のこと)。

 今回の英国総選挙でも、保守党は約37%の得票ながら過半数議席を獲得した。一方、得票率約30%の労働党は保守党に99議席の差をつけられた。また、約12%を得票した英独立党(UKIP)はわずか1議席にとどまった。