通算参拝数1万回の「日本の神さまと上手に暮らす法」の著者・尾道自由大学校長・中村真氏が「神さまのいるライフスタイル」を提案します! 日本の神さまを意識することで、心が整い、毎日が充実する。そして、神社巡りは本来のあなたに出会える素晴らしい旅だと伝えてくれます。
しかし実は神社には行きたいけれど、参拝マナーがわからないという人も少なくないようです。前回に引き続き、神社参拝のマナーについてご紹介します!

参道は端を歩く

 前回まで、どんな心構えで神社に参拝するかをご紹介してきました。
 そして、神社に足を踏み入れる際には、鳥居をくぐり、身を清め、いよいよ参道を歩くときは、真ん中は避けましょう。
 参道の真ん中は正中といって、神さまの通り道です。神社は神さまがいる場所で、僕たちはそこにお邪魔する立場。“いい道”は遠慮
しましょう。

 左でも右でも、僕はどちらかの端を歩くようにしており、さらに歩きはじめの第一歩は、真ん中を歩くであろう神さまから、遠いほうの足を出します。たとえば、左端を歩くなら、左足から。右端を歩くなら、右足から出します。

 ほんの少しの心がけですが、意識することで気持ちも高まります。

◆今回の気付き
神さまの通り道をあける

礼との作法

 参道を通って拝殿に進んだら、礼をして柏手を打ちます。
 神道の定めている作法では、〈二礼二拍一礼〉。順に説明していきましょう。

(1)鈴
 最初に軽くお辞儀をし、鈴を鳴らしたい人は鳴らします。
 鈴は雷鳴、つまり神さまが出現した象徴なのですが、神社によってあったりなかったり。神社とお寺は神仏習合でまじりあい、神仏分離で別々になったという歴史があるためです。つまり鈴は、神さまではなく人間のための道具なのです。
 そんなこともあって僕は鈴を鳴らさないのですが、これはあくまで僕の流儀で、鳴らしても大いに結構! 鳴らし方の作法はありませんし、気持ちがこもっていればいいと思います。

(2)参拝前のご挨拶
 拝殿を前にしたら軽く一五度くらいのお辞儀をして挨拶をしましょう。そして左足から三歩前に進み、四五度のお辞儀をもう一度。ここまでが参拝前のご挨拶。

(3)参拝(二礼二拍一礼)
 いよいよ参拝となります。まず二回九〇度で深く頭を下げ、頭を戻したら次にパンパンと二回柏手を打って、もう一回九〇度くらい頭を下げて一礼。ここまでが二礼二拍一礼です。

(4)参拝後のご挨拶
 参拝前と同じように四五度くらい頭を下げてお辞儀をし、右足から後ろに三歩下がって一五度の軽いお辞儀をします。頭を上げたら参道の真ん中、正中に向けて身体を開いていくように後ろに下がっていく。これは神さまにお尻を向けないようにするため。「ちょっと後ずさりしながら帰っていく」というイメージです。

「ややこしいな~」と思われるかもしれませんが、難易度はラジオ体操以下です。

 僕は礼については基本どおりにやっており、お参りのあと献笛をしたり、庭を見せていただいたりして、再び本殿の前を通りすぎるときには軽く頭を下げて通るようにしています。

 といいましても実は、柏手についてもかなりの自己流で、神社に対しては四拍、岩や巨木という自然物そのものがしめ縄などで祀られているときには九拍打っています。「一二三四、一二三四」のリズムで八回打ち、最後の一拍は音を出さない。これは〈九拍打ち〉という、僕が修行をした〈修験〉のやり方です。古来の自然崇拝と仏教がまじりあい、神道の影響も受けて成立した山岳信仰で、自然そのものが神さまという考え方。知識より実践が大切だとされ、僕はかなり気に入っています。
「二礼二拍」と書いてある神社もありますし、たくさん手を打っていると、年配の親切な方が「ここは二礼二拍よ」と教えてくださることもあります。
 しかし、二礼二拍と決まったのは明治時代以降の話です。
 何人かが一緒にお参りする〈列拝〉の際、代表者が前に出て柏手を打ちます。それに後ろの人たちが合わせやすいように、〈二礼二拍一礼〉というスタイルができていきました。それまではもっと自由だったのです。

〈柏手〉という言葉も最近のもので、もともとは〈八平手〉と言い、「『八=たくさん』の手」という意味でした。気持ちがこもっていればいるほど、何回も手を打って、神さまへのメッセージとしていたようです。

 そんなわけでかつての僕は、教えてくださった方に「いや、柏手というのはもともと~」と嫌味ったらしく答えていたのですが、考えが変わりました。
「自分の正しさにこだわるちっぽけな“我”を、神さまの前で主張するなんて、何か違う」
 そんなふうに思ったのです。だから今は、「二拍ですよ」と注意されたら、「ありがとうございます」と答えるようにしています。
マナーはマナーとして覚えておけば安心ですが、絶対のものではありません。
 神さまと仲良くするのに、正解などないのですから。

 次回は、神さまへの挨拶の仕方と気になるお賽銭についての考え方についてお伝えしていきます。

◆今回の気付き
何が正しいかよりも、神さまを思う気持ちを大切にする