久保田カヨ子が助けてくれた
私ができない「2つのこと」とは?
家内は専業主婦となり、子どもを小学校へ行かせ、研究を助ける作業は、少しはしてくれました。よくやってもらった仕事が2つあります。
その1は、私の書いた日本語原稿の清書でした。私の書いた下手な字を読んで、読める日本語にしてもらう作業です。また、脳の解説書や論文もありました。これは脳科学の知識なしではやれない作業です。すごく助かりました。
その2は、私が外国で研究発表をするときには、一緒に行くということです。私を一人で行かせると、日常生活のいろんなことがうまくできないので、監視役の同伴が必要と考えていたようです。
世界で一番大きい脳の学会(北米神経科学会)の年次大会で研究発表することにしていたので、私は会員として家内は準会員として、毎年秋に10日ほどアメリカに行くことになりました。ここで家内はコツコツ勉強していったわけです。
研究発表は前頭葉のセッションで行いますが、前頭葉でよい研究をしている人は、全部世界中から集まってくるので、知り合いになります。
準会員は、自分で研究発表できない分、いろんなサービスは受けられます。
学会は、準会員を退屈させないよう、いろんな催しを用意しているから、することはいろいろあって、忙しかったようです。
夜は気の合う友人と食事をしますが、会員は会場の周辺にあるホテルに泊まり、会場へバスで行くのですが、当時、朝6時から夜10時まではバス料金を払わずに市内のどこへでも行けました。
毎年行くので、前頭葉のジャンルでどんな研究がされているのかよくわかり、友人ができ、アメリカを知ることができます。毎年1回、2週間ほど脳の勉強をして、遊びながら新しい脳の最新知識を得て帰ってきたわけです。
私の外国出張費用は研究費から支出できるからよいのですが、家内の分は自分で出さなくてはなりません。給与以外の所得を得て、確定申告納税をしなければなりませんでした。
私自身は医師免許があるので、これを使えば比較的稼げるのですが、研究をやりながら使うのは難しかったのです。
ヨーロッパで開催されるシンポジウムに、夫婦で出席できると歓迎されます。夫婦で出席できるのはアメリカ人研究者が多いのですが、研究討論の合間に会食の会を開催市が主催してくれます。
夫婦で出ると、夫人が主賓席に呼ばれます。そうなると、出席者が喜ぶ「話」をしなければなりません。何度もシンポジウムを経験していると、主賓の挨拶を英語でできるようになっていきました。無理をしないで、勉強を続けると、能力が高くなるものです。