(3)「横展」してレバレッジをかける

 本連載の第1回でも書きましたが、トヨタには「横展開」を常にしようという考え方があります。ここでは「問題を解決したら横展をし、壁を乗り越えやすくする」という例で書きましたが、「成果を出すため」にも横展はもちろん機能します。

 みなさんの会社では「成功事例の共有」を行っていますでしょうか。私はこれまで様々な業界で働いてきましたが、この国ではまだまだ成功した事例を共有できていない企業が多いのではないかと思います。飲み屋とか雑談レベルでは話が出るものの、共有する仕組みを持っている会社は数えるほどしか見たことがありません。

 他部署で成功した事例が、自部署でも適用できる。そうなった場合、その成功事例はとんでもない近道であり強烈な武器であると言えます。それを「横展」しないだけでなく、部署同士で確執を持っていたり連携がとれていないというのは非常にもったいない話だと思います。

 ぜひ横展をするための仕組みを社内につくり、1つの成果に対してレバレッジをかけて個人も組織も成長を加速させていくべきです。

(4)常に「二階級上の立場で考える」

 会社にお勤めの方であれば、役職とか肩書きがあると思います。みなさんは普段、その役職や肩書きの人間として頭を働かせているでしょうか。私の職場では「二階級上の立場で物事を考えろ」とよく耳にしていました。課長になったから課長としてどうするか考える、部長になったから部長として何をすべきか考えるようじゃ遅いのです。

 自分が平社員だったら、部長になったつもりで目の前の課題を考える。そうすることで、多面的に物事をみることができて視野が広がります。また、自分が部長になるためのトレーニングにもなるということです。

 これは、普段から誰でも意識してできるはずです。例えばニュースを見て、ソニーを自分が経営するとしたらどうするか、自分が大塚家具の後継者だったらどういう戦略を立てるか、などと考えるクセをつけると良いでしょう。そういうことを日々考えている人は成果も出しやすく、仕事も信頼も集まってくるのです。

 以上、ここではあまりご紹介できませんでしたが、新刊『トヨタの自分で考える力』では、さらに詳しく口ぐせを取り上げながら解説しています。また、書籍ではストーリー形式で展開されておりますので、読み進めていくうちに自然と思考から行動までのプロセスを理解することができます。ぜひお楽しみください。

※原稿に誤解を招く表現があったため、正確な表現へと一部修正いたしました。申し訳ございません。(2015.8.7)