両問題の不透明感が弱まると、円相場のテーマは米国の景気と利上げの可能性に戻ろう。米成長は今後3%ペースとの予想に立ち、欧・中要因での円高はドルの押し目買いの好機と推奨している。今後数カ月は、米景気堅調とドル買い優勢地合いが相まって、ドル円は120円台後半で高値更新していくだろう。さらに今年内から2017年まで、FRBは段階的に利上げを進め、ドルは多くの通貨に対して上昇地合いを保つとみる。

 ただし、円の対ドル相場だけは他通貨より少し早めに変節を迎えるかもしれない。ユーロ安はまだ1年強の若い相場だが、円安はすでに3年近くを経ている。しかもこの間のドル円は、日本銀行の異次元緩和と公的年金の外国証券買いによってかさ上げされており、来年125~130円付近では需給に成熟感がにじみ出そうと警戒している。

 そうした兆候の一つとして、最近日本では貿易赤字が縮小し、経常黒字が拡大しつつある。これをもって今にも円安が終わると危惧する必要はない。実は、日本の経常収支と円相場には「循環的に」双方向の時差相関が観察される。まず、円相場は経常収支の変化に2年ほど先行する傾向がある。これまでの円安は当面経常黒字が増勢であろうことを示唆する。

 逆に、経常収支の変化は円相場に1年半先行する傾向がある。最近の経常黒字の増加は、16年あたりにドル円の上昇相場がピーク感を醸し出す可能性を示唆する。来年は年金買いの一巡も重なり、ドル円の下値の脆さが為替リスクへの警戒感を増幅する恐れがある。

(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)