値上げこそが正しい経営手法である
値下げが、なぜ「最悪の経営手法」であるのか、おわかりいただけたでしょうか?
いくら忙しく働き続けても、会社の利益が減っていくばかりか産業構造そのものを破壊することにつながってしまうのです。
その結果として、いずれはあなたの会社が消滅することにつながってしまいます。そうした最悪の事態を回避するには、どうしたらいいか……簡単なことです。「値上げ」という方向に思考を転換すればいいのです。
私が顧問先に最初に教えることは、「値上げこそが正しい経営手法である」ということです。値上げをするだけで、値下げという最悪の経営手法が引き起こす弊害を消し去ることができるばかりでなく、経営を一気に健全化させることができます。
先ほど値下げの弊害を解説するために、「売価100円で利益30円の商品を80円に値下げしたら……」という話をしましたが、今度は売価100円で利益30円の商品を3割値上げして、130円で売ったらどうなるかを考えてみてください。
値下げをした時のように、顧客数を増やさなくても、たくさんの数を売らなくても、人を増やさなくても、在庫を増やさなくても……現状をまったく変えずに、利益額は2倍の60円になります。
利益が倍になるのであれば、極端な話、これまでの半分の数を売ればいいということになります。仮に販売数が半分になってしまったとしても、これまでと変わらない利益額を確保することができるのです。
それでも十分にすごいことなのですが、今度は売価を倍にして、200円で売ったらどうなるのかを考えてみてください。利益額は4.3倍の130円に跳ね上がります。商品一つにつき利益率を従来の30%から65%へと一気に上昇させることができるのです。売れる数が4分の1弱になったとしても、これまでと同じ利益額を維持できることになります。これまで散々苦労して販売数を伸ばそうとしてきたのに、4分の1の数が売れれば十分と考えることができるのです。
これって、とてもすごいことだと思いませんか?
これまで顧客数を増やすことばかりを考えてきましたが、まったく逆の発想で、意図的に顧客数を減らすのです。販売個数が少なくなれば、在庫も少なくできます。それでも十分な利益を得ることができるのです。また、人手に余裕ができますから、その分をより良い商品やサービスの開発に向けることができます。
下請け企業や職人さんも笑顔になり、産業全体が活性化し、結果として顧客も喜ぶという正のサイクルが完成するのです。
「……実際の商売は、そんなに簡単にいかない」という声が、あちらこちらから聞こえてきそうですが、実際にやってみると、「今までの苦労は何だったの?」というくらいに、いろいろなことが上手く回り始めるのが、「値上げ」という経営手法なのです。