2分間の「パワーポーズ」をとることで
やる気が高まる

 たとえば、(1)「減点思考」の持ち主は、人の目に触れる仕事が苦手です。会社でのプレゼンや発表、友人の結婚式のスピーチやパーティーでの乾杯の挨拶、さらには就活や転職をする際の面接など、大事な場面で緊張して、本来の自分らしさを出せないで損をしがちです。

 そこで、おすすめなのが「パワーポーズ」をとって、心の準備をする習慣を身につけることです。ハーバード大学の教授であるアミィ・カディ博士は、ビジネススクールでMBAの生徒に教える際に、ある男女格差に気づきました。男性の方が女性よりも競争的で、成績も少し上回っていたのです。

 その違いの原因のヒントは、教室での生徒の姿勢にありました。男性は背もたれに腰掛け、足を机の上に上げるなどして自分の体を大きく見せようとしています。それに対して、女性は体をすくめ、両腕を組んで自分が小さく見える姿勢をとっていたのです。

 授業で発表をする際も、男性は胸を開いて堂々とした姿勢で、見た目の力強さを感じさせました。その印象が、教授の評価に影響を与えていたのかもしれません。しかし、外見の違いだけではないことが、その後の研究により証明されたのです。

 実験で、カディ博士はある対象者に2種類の「パワーポーズ」をそれぞれ1分間とってもらいました。別の対象者には2種類の「弱いポーズ」を1分ずつとってもらいました。その後、両グループに賭け事を行ってもらい、どんな気分かを調べたのです。

 パワーポーズとは、非言語コミュニケーションの一種で、スペースを大きくとる「広さ」と手や腕を広げる「開放さ」がその特徴となっています。弱いポーズとは、空間をとらず、腕や足を組んで閉じた印象を与える姿勢です。

 カディ博士が発見したのが、このポーズが他人だけでなく自分自身の気持ちにまで変化を起こすことでした。

 実験でわかったのが、パワフルなポーズを2分間だけ取ることで、ストレスホルモンであるコルチゾールが減少し、やる気を高め不安を抑える男性ホルモンであるテストステロンの分泌が増加したのです。

 一方で、弱いポーズを2分間とった対象者は、コルチゾールが増え、テストステロンが減りました。ストレスに過敏になり、自信が持てなくなってしまったのです。このようにポーズの違いによって、外見の印象が変わるだけではなく、ホルモンの分泌までが変わり、体の内面から自信を変えてしまうのです。

 大事な仕事の前には、個室や人のいない会議室などに入り、2分間パワーポーズをとる習慣を始めましょう。

 会議などで話をする前には、肩甲骨を回してほぐし、胸を広げ、自分の体を大きく堂々と見せるようにします。質問に答えるときは、座ってうつ向いたままでなく、立ち上がって机に手をつき、少し前のめりの姿勢を取るのもいいでしょう。存在感が出て、周りも注目してくれるはずです。

 これらは、「減点思考」というマイナスの思い込みを手放し、自信を内面から生み出す良い習慣となります。

久世浩司 ポジティブ サイコロジースクール代表
1972年岐阜県大垣市生まれ。慶應義塾大学卒業後、P&Gにて、高級化粧品ブランドのマーケティング責任者としてブランド経営、商品・広告開発、次世代リーダー育成に携わる。在職中にレジリエンスについて学び、応用ポジティブ心理学準修士課程修了。P&Gを退職後、ポジティブ心理学の実務家を育成する社会人向けスクールを設立。レジリエンスを活用した企業人材の育成に従事。認定レジリエンスマスタートレーナー。企業向けの「レジリエンス・トレーニング」は、NHK「クローズアップ現代」や関西テレビ「スーパーニュース」でも取り上げられた。主な著書に、『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!「レジリエンス」の鍛え方』(実業之日本社)、『なぜ、一流の人はハードワークでも心が疲れないのか?』(SB Creative)、『リーダーのための「レジリエンス」入門』(PHP研究所)等がある。

※本連載は、今回で終了します。