日本人にとって家族同然だった
短角牛の文化を守る

──短角牛の文化を守っていくための今後の課題はなんでしょうか?

「やはり、まだまだ知名度が低いと思うので、多くの方に知っていただくこと。そんなに大量生産できるものではないですし、また今後はTPPなどで外国産がもっと安く入ってくると思うので、消費者の方に情報を発信することかなと思います」

 短角牛は自然交配のため春先に一斉に仔牛が生まれる。そのため出荷も春に集中する。人工授精で通年出荷できる黒毛和牛は市場では有利だが、どちらがより自然に近く、牛に優しいかは明らかだ。

牛舎で仕上げられる牛。こだわりの牛肉は直販の他、『大地を守る会』などに卸され、都内のレストランなどでも食べることができる

 仔牛価格の高騰や生産者の高齢化など肉牛の世界には今後の不安材料も多い。政府は日本食普及やクールジャパン事業の一環として黒毛和牛の輸出を推進しているが、今の状態でいいのだろうか。黒毛和牛は様々な場所でブランドになり、それを否定することはできないけれど、地域ごとの個性を失わせるものでもあった。

 時代は変わり、少しずつだが霜降り肉と赤身肉の市場での価格差がなくなってきている。脱・霜降りの流れは喜ばしいことだと思う。それは健康や味のためだけではないのだから。

 岩手には南部曲り屋という母屋と家畜小屋がL字に組み合わさった日本家屋の様式がある。ひとつ屋根の下で人間が牛や馬とともに生活する。短角牛はそうした牛たちの子孫である。日本人にとって牛は大切な生き物であり、家族だったのだ。

 柿木さんのところを訪れた時、大部分の牛は山に行っていて留守(?)だったが、牛舎には仕上げの時期の牛たちがいた。

「知らない人が来るのが珍しいんです」

 と柿木さん。牛たちはこちらに興味津々で、愛想を振りまいている。その優しい目が大切に飼われていることを物語っていた。

参考:
「小売・飲食店における日本短角種牛肉利用の実態とニーズの分析」