「学生運動」が政治的影響力を
発揮するための3つの条件

雨傘革命の闘士に聞く <br />「学生運動」はなぜ敗北するのか香港中文大学日本学部の学生と上久保ゼミの交流会 Photo by Masato Kamikubo

 最後に、上久保ゼミの学生有志による、世界各国の学生運動の調査を基に、学生が政府に対する政治的影響力を持つために必要な条件について、考察してみたい。

 学生が政府に対する政治的影響力を持つには、3つの条件があると考えられる。それは、①補助金などの形で政府と直接的な関係を持っていない、②特定の思想や政党に縛られていない、③組織として長い歴史を持ち、経験値が高く、社会的な信頼性がある団体が確立された時だということだ。

 例えば、2010年11月から12月に起きた英国の学生デモを事例とする。これは、デービッド・キャメロン保守党政権の緊縮財政(第106回)による大学授業料値上げの撤回を要求するものであった。結局、この運動はキャメロン政権が法律を成立させたことで終結するのだが、学生運動自体は、英The Guardian紙が「学費改定案は議会を通るが、少なくとも学生たちは政治家にこの破られた公約に対する説明を引き出すことができた」というように、社会的に高い評価を得た。

 この運動を主導したのは、National Union of Students(NUS、European Student's Union=ESUの一部)という、全国の大学自治会の連合体であった。この組織は、英国教育省などから補助金を一切受けていない。そのことが自由な抗議活動を可能にしたと考えられる。

 また、英国の大学自治会は、特定の思想や政党と結びついていないのが特徴だ。筆者が英国の大学院に留学中に見たものだが、英国総選挙の期間中に、ウォーリック大学の学生自治会の主催で、学生が「労働党」支持者と「保守党」支持者に分かれて、討論会をなんども開催していた。双方が、それぞれの党の政治家を呼んで、演説会もやっていた。つまり、1つの自治会の中で、思想信条、政治的立場の自由が認められており、自治会内でどちらかを排除することはなく、むしろ積極的に意見を戦わせる自由な雰囲気があったということだ。

 これは、かつて過激な左翼思想と結びつき、異論を持つ者を徹底的に排除したり、粛清までして社会的な信頼を失い衰退していった日本の学生自治会、学生運動とは、正反対のあり方だと言えるだろう。

 英国の自治会、NUSは、自由闊達な議論を活動の中心としており、重要な政治課題に対してはデモを組織することがあるが、基本的に暴力的な行動に至ることはない。従って、1つの政治的影響力を持つ団体として、社会的に一定の信頼を得ている。英国政府も意思決定の際、その存在を無視できないものとなっている。