『東京が壊滅する日』を読んで
驚いた3つのこと
秋山 はい。その後、福島の状況がどうなるのか見ながら、しいたけ栽培を再開できるかどうかを考えたこともありました。
しかし、森林に降った放射性物質を取り除くことはできないし、しいたけがセシウムを吸い取る性質は、とても強いことを知っています。
雑木林のナラやクヌギは、生体内で汚染を濃縮します。原木としては使えません。水をかけて洗っても木質部の汚染は取り除けません。結論として、僕の農場で安全なしいたけを生産することはできなくなりました……。
僕が、『東京が壊滅する日』を読んで、驚いたことが3つあります。
1つは、放射性セシウムによって心筋梗塞の被害が大きくなる問題です。
マスコミではガンや白血病についてはいろいろ報道していましたが、心筋梗塞の被害がこれから深刻になっていくだろうということです。僕の友人で福島に残っているリンゴ農家の人が突然亡くなりました。この春、ガンが原因ではないと言っていましたが、元気にしていたといいますから、彼の死は原因が心筋梗塞だったという気もします。
ブドウ農家の友人は、ホールボディカウンターでのチェックを2年続けて受診したら、2年目のほうが内部被曝の数値が大きいと気にしています。彼は今年、「アブラムシの発生が異常に少ない」と話していましたが、人間だけではなく、昆虫の世界にも影響が出ている可能性、つまり福島の生態系に影響が出ているということなのでしょうか。
2つ目は、福島第一で大爆発した3号機から出た、猛毒物プルトニウムの問題です。
だって、再稼働しようとしている高浜原発や伊方原発でも、プルトニウムを大量に使う「プルサーマル運転」が行われてきたでしょう?
これはどうなるんだろう? と。『東京が壊滅する日』では「沸点3232度のプルトニウムがロッキー山脈まで到達」とあったので、びっくりしました。
3つ目は、京都に住んでいるので、若狭湾の「原発銀座」に万一のことがあったら、これは大変だろうということです。プルサーマル運転をする高浜原発ですからね。原子力規制委員会は、プルサーマルはノーチェック、と聞いています。
広瀬 『東京が壊滅する日』の裏オビに、「おそるべきことが音もなく体内で進行している! 次の被害者は、あなただ!」とダイヤモンド社が書きましたが、これは架空の話ではなく、すでに被害者が大勢出ていて、これを読むすべての人が、「明日はわが身だ」ということを知ってほしいからです。
来年2016年3月11日で原発事故から丸5年です。
いよいよこれから、多くの被害者が東京でも表面化します。
おそろしい国に住んでいることを実感して、ハラハラする毎日ですが、避難する途中で実際に被曝した秋山さんたちの怒りを、多くの人に知らせなければならないと思います。
(つづく)