今回紹介するのは、兵庫県にある通学制・昼間の大学院である。近畿圏に住む人達だけでなく、全国から入学者を集めるパフォーマンスを持っている、といってもいい学校だろう。すなわち社会人が、現在の勤めを辞めて入学する事も十分検討に値する、「人生リセット」が可能な大学院である。兵庫教育大学大学院に置かれた教職大学院の『小学校教員養成特別コース』は、「いかなる教職免許も持っていない」大卒者でも、3年間で「小学校専修免許取得」にするカリキュラムを持っている。

 もとより教職免許を持っていない人間にはなんのことか判りにくいかもしれないが、教職免許には大雑把に2種、1種、専修という3種類の免許がある。2種は短大、1種は4年制大学、専修は大学院レベルで取得できる。

 その最上級レベルの専修免許状は、普通は大学で1種免許を取得ののち大学院に進学して取得するか、または1種を取得済みの現職教員が大学院に入学、もしくは科目等履修生で単位を充足して取得する。つまり、教員免許の最上位である専修免許は、通常は1種からのレベルアップで取得するものなのである。

 一方、もともと教員免許を持っていない大卒の社会人にとっては、専修免許までの途は一般的には遠い。まず編入・学士入学・再入学などで大学の学部に入り直し、1種免許をとる事から始めることになるだろう。教育学部のゼロ免課程(教員免許を取得しないコース)出身者でもあれば多少は単位認定も期待できるだろうが、たとえ通信教育の大学を選んだとしても、負担は大きい。

 教員養成の大学には夜間や土日開講は決して多くないので、通学制の大学であれば、退職して通うのが常道だろう。とはいえ、教員採用試験に受かるとは限らないので、リスクも無視できない。そもそも教員養成課程に進まず、また教職課程をとらなかったのは、採用の確実性が低かったためである社会人が多いのではないだろうか。

 そうした状況に風穴を空けるのが、この大学院である。この『小学校教員養成特別コース』は、専門職ながら3年制という長期コース。1・2年次には学部レベルの教職課程の講義や実習を組み込むことで、ゼロから初めて、修了時には「1種免許と専修免許が同時に得られる」という、あっとおどろくカリキュラムを組んでいるのである。付属の小学校や多くの提携協力校を持っており、実習先に困らないことも特筆すべきであろう。

 もともと、教員免許状を持っていないけれども、将来、小学校で教職に就きたいと考えている人は、社会人の中にもいるだろう。そうした人間を受け入れる「長期在学制度を活用した3年制」。回り道のように見えながら、実は上位の免許状を持って、教員採用試験に臨むことができる。社会人にこそ薦めたい、教育現場への風上参入コースである。

 もともと兵庫教育大学は、1978年に設立された、先進的な構想を持つ国立の教員養成大学。初等教育の教員養成の学部と、教員を対象とした大学院に意欲的な学校である。その2分野の真部分集合ともいえる位置にあるのが、この教職大学院であり、このコースである。

 授業料は年額535,800円(入学金は282,000円)。国立らしく、リーズナブルな費用である。


兵庫教育大学大学院