創続総合研究所

「農業を続ける決意」も問われる農家の相続
~農地は、宅地並みの評価額になることもある

農地もいろいろ

児島

 そもそも、ひとくちで「農地」といっても、いろんな種類があって、評価も変わってきます。農家さんの中には、単純に「宅地や駐車場用地などより安いだろう」と思い込んでいる方もいらっしゃるのですが、そう言い切ることはできません。

 「農地の種類」を決めるのは、主にその「立地条件」です。農村部などの「純農地」ならば、確かに宅地などに比べてかなり「割安」になります。ところが、例えばそれが「市街化区域」、すなわち、すでに市街地が形成されていたり、今後計画的に市街化を進めていくことが決められていたりする地域の中にある「市街地農地」だった場合には、宅地評価から造成費を差し引いたものが評価額となりますから、宅地とあまり変わらなくなってしまうんですよ。

八木美代子
ビスカス代表取締役

八木 いわゆる「宅地並み課税」の対象になる。

児島 そうです。ただ、その場合でも、都市部に残る緑地を守るための「生産緑地」の指定を受ければ、贈与又は相続の際に、農地の評価を5~35%下げることができます。固定資産税も下げられるんですね。

 しかし、この場合も、指定を受けたらあくまでも農地として使用しなければなりません。原則として、指定後30年経過するか、主たる農業従事者が亡くならない限り、売ったり他の用途に転用したりすることはできないことになります。

八木 ということは、その場合にもやっぱり、相続人に「長く農業を続ける意志」が必要だということになりますよね。

児島 そうなんです。農業相続でまずはっきりさせなければならないのはそこで、もし相続人と後々を託される家族が農業を続ける気持ちがないのなら、その家族環境を考慮した対策を考えなければなりません。

ところが、「無頓着な」人もいる

八木 農家の方は広大な農地を持っているわけだし、農業を継いでいってもらわなくてはなりませんから、一般の人に比べれば、きっちり相続対策をやっている、というイメージなのですが。

児島 ケースバイケースですね。後継者に農家を継ぐ意思がない場合などには、けっこう無関心、無頓着な家もあるんですよ。

 こんな例を紹介しましょう。被相続人は80代のお父さん。不動産収入がメインの兼業農家で、遺産は土地や現預金など合わせて数億円ありました。相続人は奥さんと、両親と同居していた長男、お嫁に行った長女の3人です。

八木 長男は同居はしていたけれど、農業をやるのは嫌だ、と。

児島 そうです。加えて、この方はサラリーマンでしたが、年収が1000万円を超えていてご自身も蓄えがあるから、親の遺産にはとんと興味がない。娘さんも同様でした。だから、相続争いにはなりません。しかし、問題は起こりました。

 まず、奥さんがどこにどれだけの財産があるのか、まるで分からないんですよ。農家にはちょくちょくあるケースなんですが、被相続人が預金通帳から土地関連の書類から印鑑から、すべてを管理していて、他の家族に触らせない。当然の事として、相続対策は何もしていません。

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八木美代子 [株式会社ビスカス代表取締役]

早稲田大学卒業後、リクルート入社。1995年に株式会社ビスカスを設立。税理士を無料でご紹介するビジネスモデルを日本で初めて立ち上げ、現在まで10万件以上のマッチングを実現。相続に強い税理士のみを集めたサイト「相続財産センター」を運営し、相続コーディネーターとしても業界ナンバーワンの実績を誇る。著書に『相続の現場55例』(ダイヤモンド社)、『相続、いくらかかる?』(日経BP社)、『相続は『感情のもつれ』を解決すればお金の問題もうまくいく』(サンマーク出版)などがある。
株式会社ビスカス

 


相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術

相続の別名は、「争続」。仲の良かった兄弟姉妹が親の遺産を前に骨肉の争いを演じるというのは小説やテレビドラマの中だけの出来事ではないようです。諍いの中心はもちろん「お金」。ですが兄弟姉妹には、他人がうかがい知ることのできない「本音」「思い」があるようで……奥底にある「心の綾」を解きほぐすと争いから一転、分かりあえるのが家族。そうした「ハッピー相続」の例を解説します。

「相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術」

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