おいしい店で、おいしいものを食べたり、飲んだりすることは楽しい。自然と会話も楽しくなる。食欲は本能的であり、人は食べることが好きであり、その楽しい時間を他人と共有できることはまた喜びでもある。だから笑顔があふれている。
おいしいものをおいしく感じて出る笑顔はきっと「美人のもと」になる。美人はおいしく食べるのがうまいと思う。だからだろうか、食事に誘われることも多く、結果としておいしいものを食べる機会も増え、そしてそこでまた笑顔で「美人のもと」を増やしていく。幸せな循環だ。
ところがその循環に入れない人がいる。せっかくの「美人のもと」を増やす機会を活かせていない。つまり、おいしい店に行っても上手に楽しめない人だ。そういう人は店の中ですぐに見つかる。
楽しめない原因はその視線にある。視線が余計なところばかりに行く。特に他のテーブルの食べ物。他人が食べているものを頻繁に見る。もちろん手は出さないが、見ているというより、目で食べている。お皿にのっている時から、それが誰かの口に入るまで一部始終を見ている。
キミが食べるべきものは目の前にないのか。あ、ない。そう、ないことが多い。ないから他人のテーブルのものを目食いしているのか。食べたければ注文すればいいのに、なんとなく遠慮して、少ししか注文しなかったのだろうか。勢いよく食べてしまったのだろうか。注文がはっきり通っていなかったのだろうか。いずれにせよ、原因は自分にあることが多いが、目の前にはおいしそうなものがない。他人のお皿が気になる。友人の話よりも気になる。会話していても視線は他人へ。友人と目を合わせず笑う。他人の食べ物を目食いしながら笑う。会話が楽しめない。厄介なことにその友人も目食い名人であることが多く、「美人のもと」を減らしていることに気づきにくい。
自分が食べたいものをしっかり注文し、来たものをきちんと噛み締めてみる。その味に感謝する。そんな意識を持つだけで自然とおいしい顔で美味しく楽しめるはずだ。