その名前は、『もしドラ』の登場人物の一人にあった。
 しかし、真実は首を横に振るとこう言った。
「それもそうだけど……でも、そうじゃなくて、あの新任の先生」
「えっ? ああ! あの、入学式でおどおどとした挨拶をした人?」
「そう。その先生が、高校時代の体験をもとに書いたのが、この『もしドラ』なんだ」
「へえ! あの先生、程久保高校出身なんだ」
「うん。しかもその後、東大に行ってるんだよ」
「そんな先生が、なんでうちに来たの?」
「それは、いろいろ理由があるらしいんだけど、とにかくそれを知って、私も『もしドラ』を読んでみたんだ。そうしたら、すっごく面白くてさ!」
「うんうん。最後、甲子園に行くところで感動した!」
「……それもそうだけど、私はこの『ドラッカー』って人が面白いと思ったの。調べてみたら、これの元となった『マネジメント』って本、四〇年以上も前に書かれてるんだよね。それなのに、まるで今の私にぴったり……というより、これは大げさな言い方じゃなく、『私のために書かれたんじゃないか!』って思ったの。だから、とても不思議な気がした」
「ふうん。私はそこまで思わなかったけど……」
 そう首をかしげる夢に対し、真実はなおも言葉を続けた。
「だから私、興味が湧いて、この作者の岩崎夏海さん──文乃先生のことね──にいろいろ聞いてみたの」
「うんうん」
「そうしたら、文乃先生はこう言うんだ。あなたが『マネジメント』を読んで、まるで自分のために書かれたんじゃないかって思ったのは、とても自然なことよ。なぜなら、先生自身も『マネジメント』を読んだとき、そう感じたから──って。それだけじゃなく、文乃先生の周りにも、そう感じた人が多かったんだって」
「へえ!」
「それで、文乃先生が言うには、なぜそうなのかをいろいろ調べてみたら、ドラッカーがこの本を書いた意図の中に、それを知る手がかりがあったんだって」
「ふむふむ」
「ドラッカーは、今から四〇年以上前に、『これからは競争社会が到来する』と予見したの。なぜかというと、情報化社会が進むに連れて、知識層が拡大する。すると、競争に参加するプレーヤーが増えるから、競争は激化せざるを得ないだろうって」
「競争に参加するプレーヤーが増える──って?」