「いやぁ、ITのことはわからんので」と言うのはアリか?

 経理がわからない経営者はいないと思います。お金の流れが止まると会社は死にますし、経理のおかげで、お金の流れを通して会社を俯瞰できるからです。
 少なくとも、経営者が「いやぁ、経理については素人なので、彼に任せてるんですよ」と言うのは聞いたことがありません。

 同じように、情報の流れを通して会社を俯瞰するのがITです。そしてお金の流れと同様、情報の流れが止まっても、会社は死んでしまいます。
 情報の流れを支えるITは、会社にとって体に張り巡らせた血管や神経のようなものです。

 なのに「いやぁ、ITのことはわからんので、わたしではなく現場から話を聞いてくれ」という経営幹部は大勢います。少し前にも日経ビジネスで「デジタル音痴社長」という特集が組まれていました。

 そもそも、恥ずかしげもなく「ITがわからない」と公言してしまうこと自体がかなりマズイ。日本企業の経営者にとって、ITはこれほどまでに軽視されています。

経営者だけではない!

 例えば、以前他社のコンサルタントさんが
「僕らはITわからないんで、ITに関係のない変革をやってます!」と言っていて、むしろ清々しさすら感じたことがあります。

 というのは、ITに関係のない変革がかなり少ないからです。本当はその会社の一番の問題がITかもしれないし、問題解決の手段としてITが有効かもしれません。

 少なくとも仕事を始める前に、ITが無関係だと判断はつきません。わたし自身も1ヵ月くらい調査・分析をして、「これはITを何とかしないと、どうにもならんな」と診断を下せることもあります。

 なのに、最初からITに目をつぶって、まともなコンサルティングができるのでしょうか……。

 もっともITと関係なさそうな営業職について、考えてみましょう。
 ある会社で調査したところ、営業がお客さんとコミュニケーションする時間よりも、社内システムを操作している時間の方が、長いことがわかりました。
 在庫を確認したり、納入の手配をしたり、見積を入力するような時間です。

こういう状態で、「もっと顧客とコミュニケーションをとろう」とスローガンだけ掲げても意味がありません。営業が使うITを何とかして、顧客に向かう時間を捻出する他ないのです。
 営業マンに成績を上げてもらうためには、ITに向き合わざるをえないのです。