ヨガでフロー状態になれる
――瞑想はどれぐらいの頻度でしているんですか。
高城 週5回ぐらいかな。1回につき20分ぐらい。ただ楽な姿勢になって、目をつむっているだけです。
――瞑想すると気分がスッキリするような感じなんですか。
高城 スッキリというのとはちょっと違うんですよね。例えば運動した後スッキリするじゃないですか。あれとは違うんです。なんていうのかな、すがすがしい気分になる。
これがポイントで、瞑想っていうのは脳内的にはセロトニンを出すということなんですよ。ヨガは呼吸がすごく大事で、呼吸というのはその字のごとく「吸う」が後、「吐く」ことが先。吐いてから吸うわけで、いまは「出すこと」に重きをおく時代です。
ここの読者の方たちは稼ぐことや仕事で市場をとることが大事だとしたら、まずテイクすることを考えるでしょう。吸うことですよね。そうじゃない、先に吐くんです。モノを減らすことも重要で、モノを買う前に先に捨てる。
先に全部出してから始めないと、ビジネスだろうが、ヨガだろうが、瞑想だろうが、体づくりだろうが、あらゆるものが、うまくいかないんですよ。だから、いかにモノを捨てて、しなやかなポジションに自分を置くかということが、現代のライフスタイルで求めなきゃいけない一つの回答だと思ってます。
――ビジネスマンは仕事でトラブルがあったり理不尽なことがあったり、いつも悶々としてると思うんですけども、そこから脱出するためには、何からすればいいんでしょう。
高城 やっぱり、セロトニンを出すことでしょうね。ここ10年ほど、情報化社会の反動でエクストリームスポーツ(スピードの速さと危険度の高さを特徴とするスポーツ)が流行っているんだけれども、あれはすごく興奮しているように思うじゃない。アドレナリンがたくさん出て、死を恐れないような。でも、A級選手とB級選手を比べると、A級選手はアドレナリンが出てないんです、全然。
――同じ運動をやっていても。
高城 そう。超A級選手というのは、アドレナリンが出てないんです。これをよくスポーツではゾーンというんですけど、ビジネスシーンではフロー状態って言います。フロー状態は、アドレナリンが落ちてるんですね。例えばチェスや将棋の棋士でも、ビジネスマンでも、興奮してやっていると勝てないわけですよ。だから冷静にしなきゃいけない。
そのときに、アドレナリンが出ると興奮して負けちゃうから、アドレナリンを落として、逆にセロトニンを出すんです。そうすると、フロー状態とかゾーンに入るんですよ。これがあらゆるビジネスシーンでも、スポーツでも今の共通項で、勝負に必要なんです。
――ビジネスマンがフロー状態になるにはどうすればいいんでしょう。
高城 ヨガと瞑想は、セロトニンを出して、フロー状態に持っていく最高の手段の一つです。できれば、ヨガをスタジオでしっかり学びながら、家で瞑想する訓練をつけたほうがいいと思う。僕はこのスタジオに来たり、ウエイトに行く前に必ず瞑想してるんです。瞑想してから来ることと、何もしないで来るのとでは全然効果が違う。なぜなら、ちょっとフロー状態にしてヨガに行ったり、ウエイトに行くと全然効果が違うんですよ。もう脳ができてるから。身体づくりの前に、脳づくり。
――脳が集中する状態になっているということですね。
高城 ビジネスもそうで、先に脳をつくってから、すなわち軽いフロー状態に持っていってから、仕事に取り組んだほうがうまくいきますよね。冷静な目線を持てますから。
――それじゃあ、朝早くにヨガをやってから仕事に行くのがいい。
高城 ヨガをやって瞑想して、仕事に行くというのは最も効率が高いと思う。
――うちのスタジオはそういう方が多いです。朝6時からスタートしてますから。
高城 サンフランシスコとか、シリコンバレーでも、そういう人が増えてるわけでしょう。
――一流の人たちは、ヨガを体が自然と求めてるみたいな感じなんですかね。
高城 頭じゃないですかね。
――頭ですか。
高城 実はヨガって頭をつくっている気がしますね。体を伸ばしてるんですけど、脳に影響があるんだと思う。それでセロトニンを出してるんじゃないですか。アドレナリンやドーパミンは出ないから、ヨガは。最後に瞑想で落ち着いて、その後仕事に「おりゃー」という感じで行かないで、そのままの状態で行くのがいいんじゃないかな。そうするとスパッと判断できる。判断って頭で考えたり、情報を分析してするものじゃなくて、パッと決めることだから。アドレナリン放出は、リーマンショック前までのスタイル。
――熟考しないということですか。
高城 しない。熟考しているということは、パソコンで言うならCPUが回ってるから効率が悪くて、うまくいかないですよ。情報を集めれば集めるほど分析が必要になるわけで、そうすると絶対にファンが回っちゃって熱くなってうまくいかないですよね。だからパッと決める。それを、僕はよく直感という言葉に置き換えますけど、パッと決めないと正しい判断ができないんだと思う。それが負け知らずのビジネスの秘訣じゃないですか。熟考しないから脳内のエネルギー効率抜群です。
これからのビジネスマンに必要なのは「多動力」
高城 僕は非常に多動症的なんです。シリコンバレーにも多動の人がいっぱいいるんですよ。例えばテスラ・モーターズCEOのイーロン・マスクっていう人が有名で、服を着られないんです。服を着ている間に次のことをやりたくなっちゃうから、ボタンをとめられないんですよ。
――せわしないんですね。
高城 『フリー』という本を書いた、クリス・アンダーソンって有名な『Wired』の元編集長がいるんですけど、彼は1つの会議に15分しか出られないから、先月もバークレーで一緒にだったんだけど、もう3つぐらいの会議を並行して回ってる。僕も割と多動的だからそういうのは気にならないんだけど、普通の人は落ち着かないんですよね。僕はそういう多動症的なものを「多動力」と言い換えてて、今のビジネスマンに必要なのは瞬発力より「多動力」のほうだと思う。どんどん移っていく力。
――なるほど。一つのことにじっくり取り組む時代ではないんですね。
高城 一つのことをずっとやっていく時代ではないと思うけどなあ。なぜならコンピュータはマルチタスキングだからです。サイトを見ながらメールが来たらチェックして、パワーポイントやエクセルに戻って、ワードを書いたりみたいなことを、みんなやっているわけです、一つのディバイスで。これは非常に多動的。これに合わせている頭の構造は、CPUのスピードではなくて、むしろマルチタスキングな多動的なシステムのほうが重要です。CPUもマルチコアの時代だし。
だから、いくつかのことを並行してやったほうがいいんじゃないですかね。ヨガとウエイトと瞑想と食事と部屋の片付けと情報ダイエットを全部同時にやったほうがいい。
――フロー状態でずっと仕事できたら、めちゃくちゃスーパーマンになれますね。
高城 そういうことですよね。僕は常に軽いフロー状態に保つようにしてるんだけど、CPUが回ってないから、パッと考えられる。スパッとね。情報を入れたらCPUが回っちゃうから、情報は止めるんです、入れない。パッと決断する。それが結果的に絶対正しいんです。
――普通は、すぐスマホを使って調べますが。
高城 あれがダメなんですよ、考えちゃうから。そしたら脳の働きが悪くなるに決まってる。情報を入れなきゃ入れないほど、正しい判断ができるんです。