大人の読書には、戦略が必要です

 それからすぐに、楽しむだけの読書、ビジネスのためだけの読書から、自分の独自性をつくり上げるための読書にちょっとシフトさせました。

 楽しむことを止めたわけではありません。ビジネス知識の吸収を止めたわけでもありません。でも、自分を自分であり続けさせるために、単なる折衷でも平均でもない、独自のバランスや読み方が必要でした。

 それが、新刊『戦略読書』で紹介する「読書ポートフォリオ・マトリクス」であり、「ワリキリ読書」であり、「5つの視点での発見型読書」でした。「本棚や書斎の持ち方」にもこだわりました。

 それらは決して一度にできたわけではありません。私自身が社会人になってからの30年間、試行錯誤しながら編み上げてきた「戦略的な読書法」なのです。

 大人になるって、存外難しいことでした。実際に経験していないことでも、知識を得て現場や当事者の心を想像し、それへの問題点の指摘や独自の解決策の立案が必要でした。大きなコトから小さなコトまで何でも質問されるので、常に独自の洒落れた見解を持っていることを期待されていました。

 若手経営コンサルタントとして思いっきり背伸びをしていたので、いつも相手は、自分の10歳も20歳も上の人たちでした。その人たちに「こいつ意外とやるな」と思ってもらわないと、仕事になりません。それを数ヵ月ごとに、初めての業界・初めての人たち相手に、やり続けないといけませんでした。

 そのための私の最大の武器が「読書」でした。読書がどうヒトをつくるのかを感じ、考え、自らをもって実践し続けて来ました。『戦略読書』は、その私的物語であり、そのノウハウの集大成なのです。三谷流の「戦略読書」を、ぜひ楽しみながら、味わってみてください。

 読書とは一体何なのか。まずは、読書という活動が持つパワーについて、お話ししましょう。