「応用」セグメントでは、事例などの「ファクト」を中心に集める
ここまでの読書戦略に従うならば、年間多くの「ビジネス応用」本(や雑誌)を読むわけですが、そこでは効率を重視します。
まずは前述のように「新しい部分」を抽出することなのですが、もうひとつ別の視点で目的を設定しましょう。それが「事実(ファクト)」を集めることです。物事を動かすとき、力があるのはストーリーとファクトです。
ヒトはストーリーに感動し、ファクト(特に数字)を信頼します。その信頼と感動によってヒトや組織は、それまでの信念(旧弊)を変えて新しい戦略・新しい行動へと踏み出すのです。
ストーリーは組織に合わせてつくるもの。でもファクトは多くの事例から収集が可能です。強い、普遍性のあるファクトを、本から斜め読みで抽出しましょう。
『競争の戦略』に書かれた「多数乱戦業界の原因」自体は曖昧ですが、その事例は多彩です。「2 規模の経済性等が効かない」の箇所には、そういった業界の事例として、5パターン6業種が挙げられています。
・単純な加工や組み立て作業:グラスファイバー、ウレタン成型
・単なる在庫商売:電子部品の卸売り
・労働集約的:保安警備
・人手に頼り機械化・ルーチン化が困難:マッシュルーム栽培(*1)
・生産単位が零細で運任せ:ロブスター漁
これらは(論拠はともかく)ファクトといえるでしょう。これが米国での1980年前後の知見だとして、日本では、そして今ではどうなのでしょう? その変化はなぜ起こったのでしょう? そうやって私たちの知見や思索は拡がっていきます。
*1 日本ではレンコン栽培も同様。高収益だが収穫などが機械化できず大規模化に向かない。