“サラブレッド”のカキを使用
塩田熟成の「グリーンオイスター」

 鈴木さんは、フランスのカキ一大生産地であるマレンヌ=オレロンでのカキの養殖を思い出した。最終段階において、「クレール」とよばれる、塩田跡地の養殖池でカキを熟成させるのが特徴だ。塩田は汽水域であり、水深が浅く、日光がよく届くことで餌となるプランクトンがよく繁殖し、海で育ったものより甘くまろやかな味わいになる。

ファームスズキ「塩田熟成牡蠣(クレールオイスター)」は1~4月ごろには見事な「グリーンオイスター」になる

 フランスでは塩田の池で育てたカキは『クレールオイスター』といわれ、別格とされている。さらに、時期によってはエラの部分が美しいエメラルドグリーンになり、「グリーンオイスター」として最高級ブランドになっていた。

 鈴木さんはここでも、同じことができるのでないか、と考えたのだ。

 2011年、さっそく試験的にカキの養殖をスタートしたが、「8割、死んでしまった」(鈴木さん)という結果に。池は海と違って水深が浅いため夏は水温が上がりすぎることが原因だった。しかし、最初から海外輸出を視野に入れていた鈴木さんには好都合な発見もあった。

「死んでしまったカキの多くは孵化から2年目をむかえたもの。1年目は、人間でいえば赤ちゃんと同じで生命力があるので9割は生きていたんです」

 ここで育てるなら、1年で完結する養殖をしなくてはならない。しかし、海外で好まれる小さめのサイズを育てるならちょうどいい環境だったのだ。

15万平方メートルもの広大な塩田跡の養殖池

 鈴木さんは「塩田跡の養殖池」を、さらにレベルの高いカキ養殖用に整備した。

 養殖池の環境も徹底してこだわった。井戸を掘り、ミネラルや栄養が多い地下海水を池に入れてカキを育てることにより、ノロウイルス等の侵入を防ぎ、より安全な牡蠣養殖を目指している。

「土もこだわっています」

 土?

「1年のうち約2ヵ月は養殖池の水をぬいて、土を耕して干し、環境を整えます。それから水を入れなおすと生物循環がしっかりして、植物プランクトンもよく繁殖するんですよ」

 塩田跡の池は、じつは昭和30年代から平成初期までクルマエビの養殖池だった。島の人たちになじみがあり、また作ってほしいといわれて鈴木さんは当時の社員たちに指導を仰ぎながら、クルマエビの養殖も行っていたのだ。

「砂に潜る習性があるエビ養殖では当たり前に行われていることです。昭和30年代ごろから行われているエビ養殖は、技術的にも論理的にもとても進んでいます。カキは海で種もとれるし、放っておけば育つ環境なので、それは素晴らしいことなのですが、養殖自体がサイエンスとしてまだまだ進歩していないように感じました」

 欧米では「種苗生産から養殖、販売」まで自社一貫という体制が主流だ。

「だから、生産者たちは、自分で種苗生産場を持っています。カキを幼生から育てているので、とても詳しく知っていたんです」