だが、その後、難民に紛れてIS(いわゆる「イスラム国」)の戦闘員が入っている、あるいはドイツ国内で犯罪を実行したといった事例が出てくるにつれて、国内外からの批判がますます強まっている状況だ。そしてこれらのことから、長くドイツのみならず欧州の盟主として君臨してきたメルケル首相の、今年中の降板さえもささやかれる状況が生じている(1月1日付Financial Times)。

 仮にもそうした状況に陥った場合、ドイツのEU、そしてユーロへのコミットメントに変化が生じる可能性があり、それは、ただでさえ年初から不安定さを増している世界経済や金融市場に巨大なインパクトを与えかねない。

ユーロ問題の根幹にある南北格差
南欧諸国は常に緊縮財政、ドイツは独り勝ち

 ギリシャ危機については、連載第16回でも2011年末の状況を基に触れているが、あらためてユーロ問題の根幹にある問題をおさらいしておこう。

 ユーロ制度は、1991年末に締結されたマーストリヒト条約に基づいている。金融政策は、各国政府から独立したECBが担い、財政政策は1997年に締結された「安定・成長協定」に従い、各国政府が担う。

「安定・成長協定」には、加盟国の財政赤字がGDP比で3%を恒常的に超えないことが定められており、それを超えた国に対する罰金規定もあるのだが、実際には適用されていない。すなわち、各国にかなりの裁量が与えられた緩やかな制度だと言うこともできる。その結果、リーマンショック後には 南欧諸国(スペイン・ポルトガル・イタリア・ギリシャ)を中心に財政収支が悪化した。

 さらに、1999年にユーロが導入されてからの一貫した傾向として、物価が高く人件費も上がって競争力を失っていった南欧諸国に対し、東欧諸国への進出などを梃子に人件費を抑制し競争力を増したドイツやオランダなどとの間で、経常収支に不均衡が生じていた。

 通常であれば、経常収支の不均衡は、為替レートの変動によって調整されるのだが、ユーロという単一通貨があるため、そのメカニズムは働かなかった。それどころか、経常収支赤字の国々がそれをファイナンスするための南欧の国債は、ユーロ圏の他国から見れば為替リスクを負わずに高スプレッドを得られる投資であったため、そうした資金の流入によって南欧諸国はむしろ資産バブルに沸いていたのである。

 ユーロ危機は、ギリシャに新政権が誕生した2009年に、それまで4%台と公表していた財政収支赤字(GDP比)が実は12%台であったという、いわば粉飾の発覚が直接の契機ではあるが、そもそも上記のように膨張していた域内不均衡が持続不可能になったものと捉えるべきであろう。