お互いの業務を知ることで、
前工程との信頼関係が生まれた
品質保証部での取り組みの一つの大きなポイントは、コツコツ、じっくりと取り組んだことです。担当者の「気遣い作業」の洗い出しから改善までは、実に約一年をかけて行われました。
作業手順書自体は、もともと担当者の間では共有されていたようです。しかし、目的や必要なものなどは共有されていなかった。そのあたりも加えながら、しっかり業務を見える化したことで、担当者は安心して仕事を進められるようになりました。
そしてもう一つのポイントは、これまではなかった前工程とのコミュニケーションが生まれたことです。お互いの業務を知ることで、前工程との協力関係が生まれるようになりました。前工程では、後工程でデータがどんなふうに使われているか、認識されていなかったと言うのです。実は後工程がどんな情報を欲しかったのか、知らなかった。
こちらの苦労がわかれば、同じお客さまに向けて仕事をしているわけですから、理解は早い。ちょっと手間は増えるけれど、ちょっとだけだから、やりましょう、ということになったようです。担当者同士で相談後、グループマネージャー同士で確認、承認してもらうプロセスを踏みました。
それまでにも担当者間で電話をすることもあったようですが、お互いに顔を合わせてからのコミュニケーションは、一気に円滑なものになったそうです。
ミスもなくなり、「気遣い作業」も減った。もともと、後工程に悪いものを出さない、という姿勢を強く持っていました。実はそれは、他の部門でもそうだったのです。ところが、後工程が何を求めているのかを理解できていなかった。今回は、それがクリアになった。そうすると、いい流れが生まれ始めました。
入社二年目でこの取り組みを始めてリーダーとなった担当者は、「自工程完結」がうまくいった理由をこう語っていました。歩みを止めないことだ、と。結果が出るまでには、それなりに時間がかかります。走っている最中はつらくなることもある。だからこそ、歩みを止めないことが大切になると思う、と。
そして、自分の成長を感じることができた、とも語っていました。それが楽しいと思えたようです。やらされ仕事で、毎日、自分が何をしたかもわからない、ということはまったくなくなった、と。
「自工程完結」が取り入れられてからは、「ここが成長した」と自信を持って言えるようになった、と語ってくれました。