いったい何が起きたのか?カーとブースは同じ実験を12歳の子どもにも実施した。結果が同じになるか確認するためだ。結果は同じだったが、それだけではない。12歳ではグループ間の差がさらに顕著に現れた。これは運の問題だろうか?良い成績を残したグループに、不正を働いた子どもが何人かいたのだろうか?
どちらでもない、とカーとブースは報告した。「変化を取りいれた練習が、運動スキーマ(一つのまとまりとしての動きの記憶)の初期形成を促進すると思われる」と彼らは書いている。練習に組み込んだ変化が、「動きを認識する力を高める」役割を果たすのだ。
別の言い方をするなら、変化を取りいれた練習のほうが、一つのことを集中して行うよりも効果的だということだ。なぜそうなるかというと、動きを調節する基本を身につけざるをえなくなり、どんな位置の的にも適応できるようになるからだ。(中略)
邪魔を入れる学習は
美的判断にも影響を及ぼす
2006年になるとロバート・ビョークは、博士課程を修了したネイト・コーネル(現在はウィリアムズカレッジの心理学者)とともに、途中で邪魔が入っての学習が、記憶の保持だけでなく美的判断にも影響を及ぼすかどうかを確かめることにした。
彼らはまず12人の風景画家による絵画をリストアップした。有名な画家(ジョルジュ・ブラックやジョルジュ・スーラ)も数人含めたが、被験者が聞いたことのない画家がほとんどだった。
ふたりは72人の学生に向かって、コンピュータ画面上の絵画を覚えるようにと告げた。そのうち半分の学生は、一度にすべての絵を勉強した。画面に絵が表示される時間は1作品につき3秒で、絵の画像の下に作者の名前が併記される。
たとえば、クロスの絵が3秒ごとに6作続けて表示され、その次はブラックの6作が、やはり3秒ごとに絵の下の作者名とともに表示され、その次はイェイメイの絵が6作、という具合だ。同じ作者の絵を被験者がひとまとめに見ることから、コーネルとビョークはこれをブロック学習と名づけた。
残りの半分の学生も、絵を見る時間(1作品につき3秒)と絵の下に作者名が表示されるのは同じだった。ただし、絵が画面に表示される順番は作者別ではなくランダムだった。
そうして両グループは、12人の画家の絵を6作ずつ、計72作品を勉強した。どちらのグループが画家のスタイルをうまくつかむことができたのか?