うかつにも私は、この辺の事情を、息子も当然理解しているものと思い込んでいました。思えば息子は当時、やっと小学5年生です。学歴社会の不条理など、親が説明してやらないとわかるわけがないのに、私は当たり前のこととして説明すらしてやりませんでした。

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 長男が中学生になったある日、自分でも苦笑しながら「ボク、小学生のころはほんまに、勉強はお母さんのためにやらされていると、ずっと思っていたわ。お母さんが、近所の人や親戚に自慢したいからボクに勉強させていると思っていた」と言うのです。
大人にとっては当たり前でも、子どもには伝えないとわからないことがあるものですが、この告白には反省させられました。こんなに重要なことを説明せず、子どもにあの退屈な受験勉強をさせていたのです。本当にかわいそうなことをしました。

 学生さんたちのアンケートでは、親が学歴社会の実情を子どもに話して聞かせ、それがモチベーションになったという回答が結構ありました。学歴で割を食っている親の姿を見て子どもが発奮したというケースもありました。建築にたとえるなら、全体のデザインを見せて基礎工事にかからせる、実に大切な工程だと、反省を込めて思った次第です。