「1行の感想」だけで
「1冊の記憶」が再生

先にも触れてきたとおり、その本に書かれたすべてを記憶することは不可能です。

また、マーカーや鉛筆で線を引いたとしても、思っているほどの効果は望めません。ページの端を折ったり付箋をつけておくことは僕もしますが、「折ったとき、なにを意図していたか」を思い出せない場合も多く、それほどいい手段だとは思えません。

でも、「1ライン・レビュー」なら、字数が限られていることもあり、あとからひと目見ただけで「読んだときの気持ち」を呼び起こすことができます。

1ライン・サンプリングを書きためたのとは別のノートや手帳に、日付、書名、著者名を書いたら、まず1ライン・エッセンスを書き写し、その下に30~40字程度で1ライン・レビューをメモしましょう。

「長文のしっかりしたレビューじゃないと意味がないのではないか?」と思うかもしれませんが、これからみなさんは遅読家の状態を脱し、膨大な数の本を読んでいくわけですから、レビューは1行でかまいません。

1日1冊のペースで読むとすると、1年後にはレビューだけでも300行を超える分量になります。

あとから見返すときのことを考えても、引用とレビューがそれぞれ1行でビシッと簡潔にまとまっているほうが、記憶の再現効果も高くなるのです。

(第15回に続く 3/12公開予定)

印南敦史(いんなみ・あつし)
書評家、フリーランスライター、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役
1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。
「1ページ5分」の超・遅読家だったにもかかわらず、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー[日本版]」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。
その後、ほかのウェブ媒体「NewsWeek日本版」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などでも書評欄を担当することになり、年間700冊以上という驚異的な読書量を誇る。
著書に『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)のほか、音楽関連の著書が多数。