営業、説明会、発表会……。社外プレゼンはビジネスパーソン必須のスキル。ところが、多くの人が苦手ではないでしょうか?そこで、ソフトバンクで孫正義氏のプレゼン資料をつくった著者が、秘伝の「社外プレゼンの資料作成術」を全公開。本連載では、その「シンプル&ロジカル」かつ、相手の心を動かす、「超」実践的なノウハウをお伝えします!
記憶に残す「キラーフレーズ」を決める
聞き手の記憶に刻み込む──。
これが、社外プレゼンを成功させる重要なポイントです。
営業プレゼンであれば3~5分、説明会プレゼンではもう少し長い時間が与えられますが、その間に「購入しよう」「契約しよう」という最終決断にまで至ることはほぼありません(心証は決まりますが……)。多くの場合、その後の商談等を経て、じっくり検討したうえで最終決断をするわけです。そのためには、プレゼンの内容を、聞き手の記憶に刻み込まなければなりません。そして、何度も心の中で反芻することによって、最終決断へと踏み出してもらうのです。
ただし、3~5分の短いプレゼンであっても、その内容のすべてを記憶してもらうのは、まず不可能です。むしろ、最も伝えたいキラーフレーズをしっかりと記憶に刻むことが重要。そのキラーフレーズが心の中に残っていれば、それを糸口に聞き手はプレゼンの内容を思い返すことができるからです。ですから、プレゼン資料をつくる前に、「これだけは覚えてもらおう」というキラーフレーズを明確にしておくようにしてください。
営業プレゼンでは、商品名がキラーフレーズになることが多いでしょう。なぜなら、何をおいても商品名を覚えてもらわなければ、何も始まらないからです。とはいえ、場合によっては、商品名とは異なる言葉を刻み込みたいこともあります。
たとえば、私のプレゼン・スクールの生徒さんに、愛する人の遺骨をダイヤモンドにする会社の営業担当者がいます。彼は、「もう一度、逢いたい」という言葉をキラーフレーズに設定していました。
おそらく、聞き手であるご遺族の方が、亡くなった方を追想するときに、このサービスのことも一緒に思い出していただこうとしているのでしょう。そして、「遺骨でダイヤモンドをつくれば、いつでもそばにいられる」と、購買意欲に自然と結び付けてもらうわけです。皆さんも、ぜひ、このような効果的なキラーフレーズを見つけてください。
「資料+口頭」で最低7回繰り返す
では、キラーフレーズを記憶に刻むにはどうすればいいか?
キラーフレーズを繰り返せばいいのです。それも、最低7回。これは、マーケティングを学んだ方はご存知のとおり、「7ヒッツ理論」に基づく手法。消費者が広告や情報に3回接すると、その製品を認知する確率が上がり、7回接すれば、購入に至る確率が上がるという理論です
これは、プレゼンにも応用できます。1つのプレゼンのなかで、キラーフレーズを最低7回繰り返すことによって、聞き手の記憶にインプットされ、購買意欲に繋がるのです。
演説でも同じことが言えます。たとえば、1960年代の公民権運動のリーダーであるマーチン・ルーサー・キング牧師の有名な演説に“I have a dream”があります。人種平等と差別の終焉を呼びかけた17分間の演説のなかで、キング牧師は“I have a dream”というフレーズを8回繰り返しました。そして、このフレーズが多くのアメリカ人の記憶に刻み込まれ、社会を大きく変えるほどのインパクトを生み出したのです。
キング牧師だけではありません。人々の記憶に残り、人々を動かす力のある演説やプレゼンには、必ずと言っていいほど「7ヒッツ」が隠されています。これを、参考にしない手はありません。ただし、資料で7回表示すると、さすがに鬱陶しいですから、「資料+口頭」で7回以上繰り返すことを意識するといいでしょう。
プレゼンにおいて強調する「キラーフレーズ」を見つける。
そして、7回以上繰り返す──。
これが、強力な社外プレゼンの鉄則なのです。