営業、説明会、発表会……。社外プレゼンはビジネスパーソン必須のスキル。ところが、多くの人が苦手ではないでしょうか?そこで、ソフトバンクで孫正義氏のプレゼン資料をつくった著者が、秘伝の「社外プレゼンの資料作成術」を全公開。本連載では、その「シンプル&ロジカル」かつ、相手の心を動かす、「超」実践的なノウハウをお伝えします!

見せ方で「数字」のインパクトは変わる

「数字」には、人にインパクトを与える力があります。
「売上倍増」と「売上2倍」は意味することが同じですが、パッと見た瞬間にほとんどの人が反応するのは後者です。「情報漏洩のリスク大」と言うよりも、「情報漏洩の賠償200億円」のほうがギョッとします。数字によってリアリティが生まれるからでしょう。

 ですから、聞き手の感情を動かす「パワースライド」をつくるためには、「数字」を最大限に生かすことが重要です。そこで、ここでは、「数字を効果的に見るコツ」についてご説明したいと思います。

「数字」は見せ方によって、印象がずいぶんと違ってきます。
 たとえば、150時間かかる作業を100時間で行える設備ならば、「50時間削減」という見せ方でインパクトを生み出すことができます。しかし、4時間を2時間に減らす商品・サービスであれば、「2時間削減」と打ち出してもピンと来ません。この場合には、「50%削減」と表現するほうがインパクトを生み出すことができるでしょう。このように、同じ内容であっても、「数字」の見せ方によって、その効果には大きな差が生まれます。

 また、単に「大きな数字」がインパクトを生み出すとも限りません。
たとえば、発売したばかりで、まだ2%しかシェアを取れていない寝具があるとします。その快適さが医学的に証明されていて、かつ、利用者から高い評価を得ているならば、「たった2%の人しか気づいていない快適さ」などと「2%」という数字を“逆手”にとった見せ方によってインパクトが生まれます。希少性や新規性を訴えることによって、感度の高いユーザーを惹きつけることが期待できるでしょう。

 このように、「いま手元にある数字」を、さまざまな角度から分析して、聞き手にインパクトのある見せ方を見つけるようにしてください。

比喩法で「強い数字」をつくる

 さらに、「数字」を効果的に見せる方法があります。
 私は、これを「比喩法」と名付けています。よく、広いスペースを表現するときに「○○㎢、東京ドーム20個分です」といった表現がされますよね?あれです。「何かをほかの何かに置き換えて表現すること=比喩」を使って、数字に実感をもってもらうわけです。

 これは、プレゼンでも極めて有効です。
 下図をご覧ください。

 これは、30代女性を中心とする聴衆に対して、台湾旅行を提案する説明会プレゼンの資料。(1)のスライドで、30代女性の21%が化粧品に月5000円以上、つまり年間6万円以上使っているというデータを示します。

 そして、(2)~(3)のスライドで、心地よさそうな温泉の写真を表示。「気持ちよさそうですね?」と問いかけながら「箱根高級旅館×8回」というメッセージを表示し、「6万円あれば、年に8回も箱根の高級旅館に泊まれます。化粧品代を少し削れば1回は行けますね」と口頭で伝えます。

 さらに、(4)~(5)で台湾観光地の写真と「台湾旅行×2回」というメッセージを表示して、「そして、6万円あれば台湾に2回も行けます。化粧品代を半分にすれば、それだけで台湾に行けるんです」とプッシュします。

 このように、「比喩法」を使いながら、「化粧品代6万円」が「高級旅館8回」、さらに「台湾旅行2回」に相当するとたたみかけていくわけです。魅力的な写真によって「いいなぁ~」「行きたいなぁ~」という感情が生まれることと相まって、化粧品代という半ば固定費化した経費の一部を台湾旅行に振り替えてもいいと考えるようになる人もいるはずです。
 このように、「比喩法」は、数字をより効果的に見せる、非常に有効な手法なのです。

数字の「単位」を変えてみる

 ですから、プレゼン資料をつくるときには、常に、「この数字に比喩法は使えないか?」という意識をもつようにしてください。

「比喩法」に使える数字の見つけ方は3つ。
 まず、「単位」を読み替える方法。「化粧品代6万円」という「金額」を、「台湾旅行2回」という「回数」に置き換えたり、「5000万円」という「金額」を、「新規採用20名分」という「人数」に置き換えたように、「単位」を変えて読み替えてみると効果的な数字が見つかるはずです。

 第2に、非常に大きな数字を扱うときには、インターネット検索が有効です。たとえば、「高齢者医療費16兆円」という数字を「比喩法」で表現したいときには、「16兆円」というキーワードで検索します。すると、「A国の国家予算」「アップルの売上」などがヒット。「A国の国家予算」との比較で「そんなにかかっているのか」という実感が生まれるでしょうし、「アップルって、そんなにすごい会社なんだ!」という“トリビア的”な興味をかき立てることもできるかもしれません。

 第3に、カラーバス効果。カラーバス効果とは、その時々に気にしている物事に自然と目が止まる人間の習性のこと。プレゼンまで時間的な余裕があるときは、比喩を探している数字を頭の片隅に置いておくことによって、テレビや新聞や周囲との会話のなかから、自然と使えそうな数字が飛び込んでくることがあります。自分では思いも寄らない比喩が生まれることもあるので、これも有効な方法だと思います。

前田鎌利(まえだ・かまり)1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、光通信に就職。「飛び込み営業」の経験を積む。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。各種  営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会なども担当。2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも多数担当した。その後、ソフトバンク子会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師(プレゼンテーション)として活躍。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ヤフー、株式会社ベネッセコーポレーション、大手鉄道会社などのプレゼンテーション講師を歴任するほか、全国でプレゼンテーション・スクールを展開している。著書に、『社内プレゼンの資料作成術』『社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)。著者公式サイト:http://www.kamari-maeda.com/