大事な仕事をするリーダーほど嫌われない

2015年のダボス会議での一幕ですが、夜のパーティの際に、三井物産の社長だった飯島彰己さんのまわりに、大勢の人だかりができていました。ちょうど、飯島さんの「社長退任」と「役員序列32人抜きの同社最年少社長の就任」が発表された日の直後だったのです。
「どうやって次期社長を決めたんですか?」―集まった人たちからそんな質問が出ると、「人望ですよ」と飯島さんが答えていらしたのが印象的でした。

また、日本を代表する経営者の1人である三菱商事の小島順彦会長が、かつて同社社長に就任した際にも、前社長がメディア上で「彼(小島さん)を悪く言う人はいないから」とコメントされていたのを覚えています。

「世界中のあらゆる分野でリスクをとる大手商社のトップ」と聞くと、「カリスマ的で大胆なリスクテイカー」をイメージしてしまいがちですが、どうやら違うようです。さまざまな国のさまざまな分野に関わるプロが集まる多様な組織だからこそ、人望が厚い、つまり、敵をつくらない人がリーダーになる。
大きな仕事をするリーダーほど、じつは「嫌われない人」なのです。

私自身、7年にわたりダボス会議に関わるなかで、何度も小島会長とご一緒する機会を得ましたが、人に分け隔てなく処される小島会長の姿には、これまで大いに感銘を受けてきました。ヤング・グローバル・リーダー関連の記者会見にも同席くださったり、親子ほど年齢の離れた私たちにアドバイスをくださったりと、たくさんお力添えをいただいています。
そして何より、小島会長が三菱商事の話をされるご様子が、最も印象に残っています。ビジネスのことを語りながらも、そこからは、事業や社員に対する愛情が溢れ出ているからです。