2016年3月期に1400億円の連結最終黒字を見込むソニー。一部で復活の兆しと持ち上げる向きもあるが、足元ではデバイス事業が急速に悪化し、収益構造には依然として脆さが見え隠れする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)
ソニー復活のけん引役を担っているデバイス事業が、苦戦している。
1月末に発表した2015年4~12月期の業績では、デバイス事業の営業損益が117億円の赤字に転落。前年同期に比べて650億円以上も悪化する結果となった。
15年度通期の営業利益は、390億円にとどまる見通しで、1210億円という連結営業利益の3分の1を稼ぐ期初の計画が、大きく狂うことになった。
要因は大きく二つに分けられる。一つ目はノートパソコンなどに使われるリチウムイオン電池だ。
ゲル状のポリマーを使い、薄型化が可能な「ラミネートタイプ」がソニーの電池の大きな特徴だが、韓国勢をはじめとした価格競争によって受注が伸び悩んでおり、工場などの減損処理を迫られた。減損額は306億円に上る。
電池事業は過去、何度も売却話が浮かんでは消え、一時は経済産業省主導で「日の丸電池連合」構想まで持ち上がったが、その後頓挫。家電製品の要になる部品ということもあり、ソニーとして残す判断を下したが、その後も苦しい事業運営が続いている。
二つ目の要因は、米アップルの「iPhone」をはじめ、スマートフォンのカメラなどに使われる画像センサーの不振だ。
昨年夏、ソニーは長崎にある工場で生産設備に不具合が生じ、スマホメーカーなどからの受注を一部断るトラブルに見舞われた。
急ぎ修正を図って「その後需給ギャップは解消したものの、秋口から顧客の需要が減少し始めた」(吉田憲一郎副社長兼CFO)という。ここで言う顧客の需要とは、主に中国のスマホメーカーを指しているようだ。
大口顧客のアップルも中国経済の失速にあらがえず、「iPhone 6s」などの生産調整に入ったことも響いた。