何か、矛盾していませんか?

 たかが持ち物、たかが「電卓」と思われるかもしれません。しかし、よく考えてみてください。
 数字を扱うトレーニングをする研修です。どう考えたって、かなりの頻度で数字を使って考え、計算することをトレーニングする場のはず。にもかかわらず、「電卓」を用意していないという人は、次のいずれかしか考えられません。

・暗算の達人
・普段から数字を使うことに対する意識が極めて低い

 暗算の達人なんて、そうそういるものではありません。ですから、「電卓」を用意していない人のほとんどが後者ということになります。

「数字に強くなりたい。つまり、数字でサクッと考え、パパッと計算する能力を高めたい。ちなみに自分は暗算の達人ではない。でも、電卓は持ってきていません。それでも、数字に強くなりたい」――つまり、そういうことですよね。

 ……でも、なんか矛盾していませんか? と思うわけです。

 たいへん厳しい物言いかもしれませんが、そんな方が数字に強くなることはおそらくないでしょう。

何ごとも、準備がすべて

 かつて筆者がサラリーマンだった頃、お世話になった企業の経営者はどんな会議にも必ず「電卓」を持参していました。決して最新の多機能な電卓ではなく、使い古されて“いい味”が出ていた電卓でした。

 会議中もふと考え込み、パパッと電卓で何かを計算している姿を頻繁に目にしたものです。もちろんその企業は、いまも成長を続けています。

 そういえば、サッカー日本代表の本田圭佑選手はテレビのインタビューで、「よいパフォーマンスをするためにいちばん大切なことは?」という質問に「準備がすべてです」と答えていました。

 筆者の研修に「電卓」を用意してこないというのは、例えるなら、サッカーの練習をするのにスパイクを用意していないのと同じ。上手になるための最低限の準備ができていないのです。