中小零細から中堅企業へ。
その発展フェーズとは?
危機感と飢餓感を原動力にして創意工夫を重ねることによって、次々と新製品、新技術が生まれます。それを連綿と続けると、企業が拡大発展していきます。これが、中小企業から中堅企業へと成長する段階です。危機感と飢餓感を原動力にして創意工夫を重ね、単品生産では将来が不安だと考え、間断なく新製品、新技術の開発に努め、企業を拡大発展させていく。それが中堅企業になっていく過程なのです。
前にとり上げた京都企業のロームをこの過程にあてはめてみます。先ほど言いましたように、最初は創業者が在学中に特許をとった炭素皮膜抵抗器の生産から始めます。安価に生産できたので、たちまち市場で受け入れられ、他にも抵抗器をつくる有名な会社がある中で、成功を収めます。私はロームの創業者と同年代なものですから、「たいへん面白いことをされている。今後はどのように発展していくのかな」と関心をもって見ていました。
ロームは炭素皮膜抵抗器の生産をどんどん拡大していきました。ですが、やはり単品生産では先行きが不安だ、と思われたのでしょう。金属皮膜抵抗器、次に厚膜抵抗器と、次から次へと新商品を開発していきました。
創業者の佐藤さんは理工学部を卒業されていますが、金属皮膜抵抗器や厚膜抵抗器などについて詳しく知っていたわけではありません。ですが、次から次へと拡大発展を続け、今では日本で最もニッチな分野の半導体を生産し、すばらしい高収益をあげる半導体メーカーに成長されたのです。
半導体の生産はたいへんお金がかかります。大企業しかできないと言われている半導体の生産を、中小零細企業のロームが手がけた。しかも、他社が狙わないニッチな分野を狙った事業を展開して、すばらしい伸びを示している。売上は現在三〇〇〇億円くらいでしょうか。私よりも会社をつくられたのが五年ほど早いのですが、たいへんな発展をしています。
※『稲盛和夫経営講演選集 第3巻 成長発展の経営戦略』、「中小零細企業が大企業へ発展するためには」より抜粋