「市場が気候変動をなおす」
――現場で見えた、都合のいいモラリティ

―― 一般の人たちは、気候変動を否定的に見る傾向があります。ですが英語には、It is an ill wind that blows nobody any good.(誰にも得にならない風は吹かない:甲の損は乙の得)という諺があるように、誰かが得をするものです。気候変動、地球温暖化の好ましい面とは何でしょうか。

ファンク 遠い将来を見たら、一般の人たちが考えていることは正しいと思います。つまり、気候変動はよくないものです。一方で近い将来を見ると、好ましい面とよくない面の違いは出てきません。ですから気候変動のために起こる好ましいことは、20年後、30年後というような中間的な将来にあるかもしれません。グリーンランドがいい例です。

 グリーンランドはデンマークに依存していますが、依存しないで独立したいと思っています。氷が解けて、鉱物や石油にもっとアクセスできるようになれば、デンマークから独立できると彼らは思っています。しかし、遠い将来を見ると、気候変動で得する人は誰もいません。

―― グリーンランドは気候変動や地球温暖化の好ましい面を理解するのに、好例だと思います。

ファンク ベストケースと言ってもいいでしょう。グリーンランドに住んでいる5万7千人の人を、気候変動を引き起こしたことで非難することはできませんから。彼らは、温室効果ガスを排出していません。もちろん、伝統的な狩猟など、温暖化によって失われる部分もあります。海水温の上昇によって穫れるようになった新種の魚をあまり喜ばしく思っていない人もいますが、全体的にグリーンランドの国民は幸せです。

―― 温暖化は人間が作り出した現象ですが、温暖化に乗じてお金儲けをしている、あるいはしようとしている人を悪人だと言っているわけではないですね。

ファンク もっと複雑ですね。取材でいろいろな人たちと多くの時間を共にしましたが、悪人のようには見えません。多くの人はイデオロギーによって突き動かされているようでした。極端な資本主義者も多くいます。自分たちのモラルでは「お金を儲けることはいいこと」であるのです。彼らは、市場が気候変動をなおすことができると思っています。

―― 彼らは気候変動のケースを単なるもう1つのビジネスチャンスと見ているのでしょうか?

ファンク そうですが、それ以上のものです。ビジネスチャンスではなく、ビジネスそのものであるということです。資本主義がすべてのものをなおすことができると思っています。アイン・ランドの自由主義思想のようなものです。彼らは「これは単なるもう1つのビジネスチャンス」だと言うのではなく、「これはビジネスそのもので、そのビジネスが問題解決に役立つ」と言っているのです。彼らは言わば、都合のいいモラリティを見つけて、ほとんどの人にとって悪いと思われていることから、お金を儲け続けているのです。

次回は、「日本沈没」のリスクとその回避のために必要な現実的すぎる手段とは、そして、温暖化で増える花粉症と感染症が「誰の」利益となっているのかなど、『地球を「売り物」にする人たち』刊行後の最新情報を、マッケンジー・ファンク氏に問う。4月8日公開予定。