「ファイナンス」や「ファイナンス理論」と聞いて、みなさんはどんなことを連想しますか? ファイナンスとは端的に言えば、「企業や事業の価値を最大化するためにはどうすればいいかを理論的に考えるためのツール」です。本連載では、モーニングスター株式会社代表取締役社長の朝倉智也氏の著書一生モノのファイナンス入門の内容をベースに、ファイナンスの基本のキからわかりやすくお伝えしていきます。

企業のキャッシュの流れを示したもの

 キャッシュフロー計算書とは、その名の通り、企業のキャッシュ(現金)の流れを示したものです。

 上場企業に開示が義務づけられたのは2000年のことなので、貸借対照表や
損益計算書と比べると馴染みが薄いといえるかもしれません。

 しかし先に見たように、現金の流れを確認することは企業が置かれている状況をつかむ上で、極めて重要なポイントとなります。

 キャッシュフロー計算書を見る際は、まず「3つの袋」を確認します(下図参照)。

 

 1つめは「営業活動によるキャッシュフロー(営業キャッシュフロー)」です。これは、企業の本業から上がるキャッシュを示します。プラスであれば事業がうまくいって利益が出ている状態、マイナスの場合は事業がうまくいっていない状態だといえます。

 プラスが望ましいといえますが、成長期にある企業の場合、赤字でも問題ないと判断できるケースもあります。

 2つめは「投資活動によるキャッシュフロー(投資キャッシュフロー)」です。これは、企業が設備や有価証券等に投資したり、売却したりした際のキャッシュの流れを示します。

 一般には、積極的に投資をすることでこの「袋」がマイナスになっているのが企業のあるべき姿だと考えていいでしょう。プラスの場合、資産を売却して現金化を進めているということですから、手元の現預金が不足気味ではないかと予想されます。

 3つめは「財務活動によるキャッシュフロー(財務キャッシュフロー)」です。これは、借り入れや株式の発行による資金調達をした場合はプラスになります。