生後7ヵ月半で歩きだした次男

 自分の身体を自分の力で移動できる赤ちゃんは、うれしくて楽しくて、無意識に視覚や筋力をきたえ、二足歩行を円滑にする予習をしているのです。

 私の次男は、生後4ヵ月ごろからハイハイを始め、お兄ちゃんの後を追って、部屋中這いずり回りました。

久保田競
(Kisou Kubota)
1932年生まれ。医学博士、京都大学名誉教授。世界で最も権威がある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の権威。2011年、瑞宝中綬章受章。『ランニングと脳』『天才脳をつくる0歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』など著書多数。

 静かだなあと思うと、うつぶせになり、床をよだれだらけにして寝ていました。
 よく遊び、よく寝て、世話のかからない赤ちゃんでしたが、鈍重なところがあり、この子の感覚をどう磨こうかと試行錯誤したものです。

 そんなある日、久しぶりに小児科検診につれていきました。
 そのときは、生後7ヵ月半でした。
 小児科医は「もう立てるかな?」と言いながら、ベッドの上に立たせると、タッタッとベッドの端まで歩いたのです。
 両手を上にした、おサルの歩き方でした!

 そのとき医師は、

「歩くのが早すぎるけど、まあいいでしょう。すぐに靴を履かせなさい」

 と言って、靴を指定しました。

 その靴は、フェルト製の軽いベビー靴と違い、足首を保護するための編み上げ靴の一種で、底の硬い革製です。

「部屋の中でも歩かせるときは、履かせなさい」
 と言うので、すぐに靴を買いにいきました。

 立ち始めも、歩き始めも同時に始まったわが子の姿に、私も親バカでうれしくて……。
 医師から、

「ピッタリ足にフィットするものを用意し、素足で履くように」

 と言われたので、サイズ合わせを念入りにしました。