「不正解」を知れば、仕事のスピードが一気に速くなる

 あるファイナンスの講義のなかで教授がこんなことを言っていた。

「金融の世界に正しい答えはないが、間違った答えはある」

 なにげなく発せられた言葉だが、じつは、これこそビジネス理論を徹底的に学ぶ動機の一つとも言える。こんな場面を想像してほしい。

 いまここにA、B、Cという三つの選択肢があり、あなたは経営者としてどれか一つを選ばなければならない。シビアな決断を迫られる場面だ。

 この判断に必要な理論が身についていれば、A、B、Cのそれぞれを選ぶと1年後のキャッシュフローはどうなり、それによってどんな人的な課題やトラブルが起こりうるのかをある程度、予測することができる。

 すると、それだけ判断の精度とスピードは増すし、選択肢の検証にかかる時間と労力とコストを減らすことができる。これはかなりのメリットだ。

 エグゼクティブクラスはビジネスにおいて日常的に厳しい判断を迫られていて、自分の判断が会社の行く末を左右してしまうようなケースはめずらしくない。

 また、部下が自分の経験したことがない分野で提案を持ってきたときに判断しなければならないことも日常茶飯事だ。そのときに、自分が知らないという理由で却下したり、わからないまま承認したりすることがないように、知識から仮説を立てて正しく理解して判断することが求められる

 経験も大事だが、そこに知識が加わることで、いかに大きな助けになるかを彼らは痛いほど知っている。だからこそ、彼らは基礎的な理論でも手を抜くことなく、必死で学び続ける。