お金をきちんと貯めるためには
危機感を持つことが大事

朝倉 深田さんの『定年までにやるべき「お金」のこと』は、冒頭の「まずは現状を正しく認識して“気持ちの粉飾決算”を止めること」という部分を読んでハッとする方が多いのではないかと思います。これは名言ですよ(笑)。

深田 最近は「下流老人」や「老後破産」といった言葉がメディアをにぎわせるようになって、楽天的だったバブル世代も「このままではまずいのでは」と感じ始めています。でもどこかで「自分は大丈夫なはず」と思いたい気持ちもあるんですね。今回は、危機意識を持って老後への準備に取り組んでほしいという思いがあって少し厳しい書き方になりました(笑)。

朝倉 最近は世代を問わず、老後不安が高まっていますよね。私が登壇するセミナーや講演会にも、若い方の姿が目立つようになっています。それでも40〜50代はまだ少し甘いところがあるということでしょうか。

深田 私は大手企業で40〜50代社員向けセミナーを10年近く続けています。そういった経験をもとに、2014年9月からダイヤモンドオンラインで「40代から備えたい 老後のお金クライシス!」を連載してきました。

 今回の本はその内容をもとにした書き下ろしなのですが、私がこうした取り組みを通じて今の40〜50代を見てきた経験から感じるのは、「お金をきちんと貯めるためには危機感を持ってもらわなければダメだ」ということなんです。

朝倉 40〜50代が危機感を持つべきポイントとは具体的にはどんな点ですか。

深田 40〜50代の老後の準備を妨げる“三重苦”は、
「多額の住宅ローン」
「高騰する教育費」、
そして「どんどんお金を使う『消費好き』」です。

 まず、住宅ローンについては老後に大きな負担を引きずりかねない状態の人が多いのですが、60歳時点の住宅ローン残高を知っている人はほとんどいません。何となく「退職金で返せばいい」と考えているのに、退職金がいくらもらえるのかも分かっていない人が多い。「いくらもらえるかわからないお金で、いくら残っているかわからないローンを返そうとしている」んです。

朝倉 40歳で35年ローンを組んだら、75歳完済。定年退職時に何とかしようと考える人は多そうですが、ローン残高が多すぎて老後資金が返済に消えてしまったりしたら目も当てられませんね。

深田 それに加えて、今の40〜50代が負担する教育費は、親世代である70代と比べても格段に重いんです。昭和52年と平成25年で比較すると、この間に公務員の初任給は2倍ちょっとに伸びていますが、大学初年度の授業料と入学費は私立大学で約3倍、国立大学は約5倍にもなっています。

朝倉 教育費に関しては、バブル崩壊後の日本経済の低迷期を経てもデフレにはなっていないわけですね。

深田 それに、今の40〜50代はバブルの時代やその残り香を知っている世代なので、「消費好き」で貯蓄ができていない人も少なくありません。まずはこうした現状に置かれていることを認識して、「なんとかなるさ」ではなく「なんとかする」と意識を変えていくことが必要なんです。

第2回へ続く