「6月1日に面接を受ける企業をどこにしようか迷っています」
この学生の言葉の裏には「初日に面接を入れる=第一志望という意思表示をしなければ」という思いが隠されている。
学生は、書類選考通過の案内を受け取ると、面接日程の予約を入れる。
当然、早い日程で面接を受けた学生から順に内定をもらうことができるため、志望度の高い企業を優先して面接の日程を入れていく。
つまり、企業は優秀な学生には初日である6月1日に面接を入れてほしいと思っている。しかし、売り手市場ゆえ、学生は面接に進める企業数が多い。どの企業の面接を初日に入れるか、学生たちが「選ぶ側」なのだ。
6月1日に次々と採用市場から消えていく優秀な学生
ここ数年、企業は「リクルーター制度」を復活させている。
バブル世代の人には懐かしい響きかもしれないが、この制度は、リクルーターと呼ばれる現場社員(若手が多い)が、学生と面談を行い、仕事や業務に関する話をしたり就職相談を受けたりするというもの。早期に優秀な学生とコンタクトをとり、自社に興味を持ってもらうことが狙いだ。
「青田買い」と批判されることもあるこの制度を進めている企業は、毎年、「解禁日」に内定を出す。つまり今日だ。
優秀な人材は内定を受け取り、こうしている今も、次々と就職活動を終了している。
一定数の優秀な学生が、今日一日で、ごっそり就活マーケットからいなくなってしまうのだ。
「選考解禁日」は「就活終了日」にもなり得るというわけである。
社員の人事評価にも直結するリクルーター制度
このリクルーター制度は、年々、採用活動の要になっていて、全社員の重要業務として位置付けている企業もある。
「担当学生が6月1日に内定を受け取り、就職活動を終了するかどうかが、人事評価にも影響がある」と語るのは金融業界で働く6年目の社員だ。
リクルーター制度で担当を任された学生と面談を複数回重ねてきた。その学生に内定が出て、なおかつその学生が自社を選んでくれると、自分自身の評価も上がるという仕組みだ。
学生に話を聞いても、各社のリクルーターがかなり積極的にアプローチをしている様子がうかがえる。
「あとは6月1日さえ来てくれれば、内定が出せるからね」
「6月1日は4時間ほど拘束させてもらうけど大丈夫かな」
「うちの会社が第一志望だよね。6月1日に人事部長の時間をとっておいたから」
学生たちはこれらの言葉をかけられ、相当なプレッシャーと覚悟で受ける企業を選んでいる。
学生にとっては、6月1日は自身の将来を左右するような大きな決断の日なのだ。