――そのために必要なことは?
大企業の側が意識を変えていく必要はあると思います。自分のところで全部自前でやろうとするのではなく、積極的にスタートアップにかかわっていこうとしなければ、何も始まらないでしょう。
ただ、理念ばかり言ってても仕方ありませんから、まずは、DMM.make AKIBAのような「場」をつくっていくことも重要だと思います。ここは、モノづくりベンチャーのインキュベーション施設ですが、実は、大企業の一部門が入居していたりもします。スタートアップのど真ん中に大企業が飛び込むことで、意識は絶対に変わると思いますし、ここから成功事例が生まれれば、産業界全体の意識変革にもつながるかもしれません。とても、大きな可能性を感じているところです。
――それは、楽しみですね?
最近は、日本ではゼロイチが生まれないという悲観論をよく耳にしますし、私も、残念ながら今はそのとおりだと思います。しかし忘れてはならないことがあります。それは、かつての日本はゼロイチのホットスポットだったということ。米タイム誌が発表した「世界に最も大きな影響を与えた50のガジェット」の上位20のうち七つは、ウォークマンなど、高度成長期からバブル期に日本で生まれたものなんです。
おそらく、戦争で焼野原になり、どの企業もベンチャーとして出発するしかない状況があり、そこから力をつけて来た企業群からゼロイチが次々と生み出されたんです。ジョブズが憧れたのは、この時期のソニーをはじめとする日本企業だったことを忘れてはならないと思うのです。
特に、日本ではハードウェア・スタートアップには大きな可能性があると思っています。日本には細かいところまできっちりと詰めて作るのが得意な人が多いですから、モノづくりに向いているからです。もちろんソフトウェア産業も伸ばしていくべきですが、モノづくりとソフトウェアが合体する分野でこそ、日本はその強みを発揮できると私は考えています。
(おわり)