「いい努力、悪い努力とは何か?」の「解答」を提示する

 以上、7ポイントの「いい努力」の定義を、しっかり押さえたうえで、本題に入っていこう。

 私はマッキンゼーで25年間コンサルタントとして働き、うち20年間をパートナーとして多様な企業の経営者のアドバイザーを務めてきた。

 その後イオングループでグループ横断的な経営課題の抽出と、それに対する解決策の立案・実行を推進する役割を担ってきた。もちろん、どんな課題も自分一人で解決することはできない。同僚である役員たちとの協働やチームを組成して取り組むことが不可欠であるし、経営トップとの協議も非常に重要な要素となっている。

本書は、私のこうした二十数年間の経験に基づくものだ。自分自身の失敗や成長、先輩や同僚の姿、後輩たちの育成、仕事をともにした優れた経営者やリーダーたちから学んだことなどを土台に、自分自身の信念として芽生え育ってきた考えをまとめてみた。

 あらゆる組織において、個人としての「いい努力」とチームとしての「いい努力」は大きな価値を生み出すものだと信じている。

 成果を出すことが目的であれば、成果につながらない資料をつくったり会議をしたりするのは時間のムダだ。社内手続きや上司の思惑など、最終的なゴール以外のことに対して多大な時間と神経を使うのは「悪い努力」となる。

 個人や社内の自己満足に終わり、お客さんを喜ばせなければ、成果は出ない。成果が出なければ株主も喜ばないし、社員の充実感や成長に結びつかない。

 では、一人ひとりが成果を出し、ひいては組織全体のパフォーマンスを上げていく「いい努力」とは何か?

 成果が出ない不毛な頑張りを強いたり、「なんでこんな遠回りをしなければならないのか」と優秀な人の意欲を下げたり、組織を機能不全に陥らせたりする「悪い努力」とはどのようなものか?

本書で私なりの解答を提示したい。

(※この原稿は書籍『マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をしてわかった いい努力』から抜粋して掲載しています)