私たちが思っている以上に、仕事上のちょっとした工夫が、成果や評価に大きな差をうんでいた?! 世界一のコンサルティングファームで世界7か国のビジネスに携わった著者が、社内外の“できる人”たちの仕事の鉄則をまとめた翻訳書『47原則 世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』(原著タイトル“THE McKINSEY EDGE”)より、今日からでも役立つ成功原則の一部を紹介していきます。
今日のお題は「踏み込んだ質問で相手の答えを引き出す」。的確な質問をするのは、誰にとっても難しいことです。だからこそ、その能力を身につければ、あなたを際立たせる強力な武器になります。ここで紹介する相手の答えを導く5つの質問を参考にして、実践してみましょう。

 コンサルタントとは、いわばクライアント企業の相談相手です。

 優秀なコンサルタントは、駆け出しの頃から、質問形式でクライアントを成功へ導いていく方法を身につけていきます。一方で、無能なコンサルタントほど、自分が答えを教えなければならない、すぐさま教える立場に回らなければならないと考えます。

「5W1H」の質問は標準的だが、浅い内容に終始してしまい、相手に掘り下げて考えてもらい答えを引き出すまでは至らない。そんなとき有効な「5つの質問」とは…?

 しかし大抵の場合、クライアント企業のトップや幹部層はすでに多くの答えを持っているものです。教えるよりも、むしろこれらの答えを引き出し、彼ら自身に発見させるプロセスが重要なのです。

 たとえば、ある製品の価格決定をする場であなたが手を貸していると仮定します。通常であれば、決定の判断材料となる要素に関する質問をするでしょう。

 なぜ値上げしたいか、値上げ幅はどれくらいか、それはなぜか、いつが一番良いタイミングかなど、基本的には「誰が(Who)、何を(What)、どこで(Where)、いつ(When)、なぜ(Why)、どのように(How)という「5W1H」が一般的です。ただし、これらは浅い質問に終始しがちです。

 また、”なぜ”の質問でどんどん追求していく場合も、表面的な質問であることには変わりありません。

「なぜ値上げしたいのですか」「競合他社が値上げしているから」
「なぜ競合他社は値上げしているのですか」「物流コストが増大しているから」
「なぜ物流コストが増大しているのですか」……

 こんなふうに突き詰めていけば、決定的な根拠にたどり着くかもしれませんし、標準的な手法といえます。でも、膨大な時間がかかってしまい面倒です。

 相手が決断に至る、もっと賢明な別の質問方法があります。あなたが質問したい行動(この例でいえば「価格決定」)がすでに完了していると仮定するのです。そのうえで、次に何が起こるのかを質問します。

「値上げしたいのは分かりました。そのアクションが行われたと仮定すると…」で始めてください。
「競合他社はどう反応しますか」
「会社の長期的な収益率はどう変化しますか」
「他の製品ラインへのマイナスインパクト(カニバリズム)は?」
「それでも値上げしたほうがいいですか?」

 すると、会話は自然と興味深い展開になり、結果がどうなるか相手に掘り下げて考えてもらうことができます。しかも、前もってあれこれ分析したり調査する手間が省けます。こうした質問をする際は、「こうしたら、どうなるだろう?」と、最初から物事の先を読むことを心がけます。先を読んで一歩踏み込んだ質問をする場合もこれと似ています。

 一例として、マッキンゼーで使われていた、相手の答えを引き出すための5つの質問をご紹介しましょう。

1.「もし〜だったら」と理想の状態を想定した質問
:ある条件や状況が整えば、展望が変わる場合に尋ねる

【事例】
・今の世の中をxとして、もしあなたがxをyに変えられるとしたらどうしますか?
・もしあと10億円あったら、別の行動をとりますか? それは、どんな行動でしょう?

 できれば、この質問に続けて、「では、それを実現するために、現在何ができるでしょう?」と重ねて質問するといいでしょう。

2.「〜だと納得するためには何が必要ですか?」と尋ねる質問
:仮説や思い込みを検証する

【事例】
・御社の売り上げが倍増すると納得していただくには何が必要ですか?
・御社の下位2割に当たる社員が生産性を向上できると納得していただくには何が必要ですか?

3.「他の人の立場に立たせる」質問
:現在の仮定や論理に存在する潜在的な欠陥を特定する

【事例】
・競合他社が御社の立場だったら、何をするでしょう?
・あなたの後継者が今すぐCEOの役割を引き継ぐとしたら、何をするでしょう?

4.「他の選択肢や代替案」を尋ねる質問
:現在提案されている選択肢以外の道がないかを検討し、代替案を提示する

【事例】
・目的達成のための3つの方法を伺いましたが、それ以外の方法で目指す成果をもたらすことはできますか?
・他にもっと良い手はありませんか?

 これは「A、B、またはC」という選択式ではなく、自由回答式の質問なので、相手の考えを発展させることができます。

5.「現実的で実行可能な次のステップ」を尋ねる質問
:目標達成に向けた具体的なステップを導き、潜在的な障害やリスクを見極める
【事例】
・新規に100名を採用し、同時に現社員の1割を解雇するうえで、障害は何ですか?
・次に起こることは何でしょう? 今後の担当者は誰が適任ですか?

 的確な質問をするのは、誰にとっても難しいことです。だからこそ、その能力を身につければ、あなたを際立たせる強力な武器になります。相手の答えを導くこの5つの質問を参考にして、自分なりに考えを深め、実践してみましょう。

 ただし、頭の中にこういった質問のパターンを用意していれば、示唆に富んだ質問ができるというわけでもありません。核心に迫る有意義な質問をするためのカギは次の3つにあります。第1に、業界や業務機能における経験を積むこと、第2に、クライアントや、クライアントの置かれた状況、あるいは人物そのものに対する感度を高め相手の立場で考えること、第3に、次々と物事を掘り下げていくように努めること。いかがでしょうか。是非、日々のビジネスでトライしてみてください!