具体的に近年で言えば、サントリーがアメリカのバーボンのブランドである「ビーム」を1兆6500億円かけて買収したというニュースに続き、アサヒビールがイタリアのビールブランド「ペローニ」とオランダの「グロッシュ」の2ブランドを合わせて3300億円で買収したというニュースは、その戦略の実践だろう。

 ビールといえばヨーロッパがメインの市場だから、アサヒがその市場のトップブランドを買収するというのは、それなりに意味のある戦略だと思う。国別でひとりあたりのビール消費量がトップの国はチェコ。以下、オーストリア、ドイツ、ポーランドのようにヨーロッパの国々が比較的上位にランニングされる。ビールはヨーロッパに向いているのだ。

 しかしそのチェコですら前年に比べると消費量は減少しているという。では世界で大きな市場はどこなのか?

 実は純粋に市場の大きさで言えば1位は中国、2位はアメリカ、以下ブラジル、ロシアという形で、アメリカを除けば人口の多い新興国がビール大国ということになっている。さらにM&Aの投資先ということで考えると、すでに消費量が大きくなってしまった国よりも、これからビールの消費量が増えそうな発展途上国に目をつけたほうが費用対効果は高いかもしれないという考察も成り立つだろう。

 その観点で言うと、ビール大手の中でキリンのM&A戦略が面白い。実はキリンは過去10年間でみるとまずフィリピンのサンミゲルを買収している。そしてそれに続いて、ミャンマーやブラジルのビールブランドを買収しているのだ。

 アメリカの大手を買収したサントリー、欧州に進出しようとしているアサヒ、そして新興国を狙うキリン。10年後、他社に差をつけているビール会社はどれだろうか?戦略の違いが明確に出ているだけに、その結果がどうなるのか興味津々の気持ちである。