私はブリージング・スペースのときと同じように、「研究が進まず焦っている」というフレーズを思い浮かべた。
「このように考え方のクセを1つの文にするのには意味がある。認知の歪みに名前をつけることで、それに対する決まった対処法がとれるようになるからじゃ。
心のプラットホームにはごちゃごちゃといろんな電車(雑念)が入ってくるように思えるかもしれんが、じつはごく限られた種類の電車しか走っとらんかもしれん。電車の名前がわかってしまえば、『ああ、またこの電車か』と落ち着いて対応できるというわけじゃな」
「一種のラベリングですね」
私の相づちにヨーダは満面の笑顔で答える。
「いかにも!では、すでにラベリングした考えが現れてきたとき、どんな対処をすればいいか?これにはだいたい5つくらいの方法が考えられる。
(1)捨てる――あまりにも何度も浮かんでくる考えであれば、『もう十分!』とばかりに頭の外に送り出す。シンプルじゃが、あなどれん方法じゃ。
(2)例外を考える――その考えが当てはまらないケースを考えてみる。同じ考えが現れるのは、同じ前提を置いているからじゃ。自分はどんな前提を置いてしまっているのかに思いを馳せると、それが当てはまらないケースが見つかるぞ。
(3)賢者の目線で考える――自分が尊敬する人や歴史上の偉人なら、この考えについて何と言うだろうか、と考えてみるんじゃ。君のプラットホームに偉人の目線を招き入れるわけじゃな。
(4)善し悪しで判断するのをやめる――マインドフルネスの基本はいまここをあるがままに受け入れることじゃ。その考えがいいとか悪いといった価値判断をしないノンジャッジメンタル(non-judgmental: 判断しない)こそが基本じゃ。
(5)由来を探る――なぜその考えが何度も現れてくるのか、その原因を探るという方法じゃな。なぜその電車は頻繁にプラットホームにやってくるのか。どこからその電車はやってくるのか。それを突き止める。繰り返し現れる考えの原因になっているのは、自分の中の満たされていない願望じゃ。これをディープニーズ(深い願望)という」