私たちが思っている以上に、仕事上のちょっとした工夫が、成果や評価に大きな差をうんでいた?!世界一のコンサルティングファームで世界7ヵ国のビジネスに携わった著者が、社内外の“できる人”たちの仕事の鉄則をまとめた翻訳書『47原則 世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』(原著タイトル“THE McKINSEY EDGE”)より、今日からでも役立つ成功原則の一部を紹介していきます。
今日のお題は「難しい質問に答える前に3秒の間をとる」。プレゼンや会議の場で、答えにくい質問が飛んできたとき、慌てて言葉を継ぎたくなるものです。でも、ちょっと待った!3秒数えて待ってみてください。

 大きな利害が関わっている場合は、質問への回答に迷うことがあります。聞き手がさらに難解な質問を浴びせかけてくるのではないかと心配したり、はるか上の上司たちの視線が背中に突き刺さるのを感じたり……。「会議室にいる全員を印象づけなければ」と焦ったりもするでしょう。

 相手が経営幹部レベルの重役や、非常に有望なクライアントである場合は特に、心臓が飛び出しそうになるほどのプレッシャーです。質問にさっさと答えてしまいたいという衝動に駆られます。そんなときこそ、わざと立ち止まり、「1、2、3…」と3秒数えるまで待ちましょう。

 私がマッキンゼーで教わった最善のアドバイスのひとつが「質問に答える前には必ず間をおくこと」です。

 エンゲージメント・マネージャーになり、早くも1年が過ぎようとしていたときのことでした。プレゼンの際、アソシエイト・プリンシパルのひとりが、どんな質問に答える前にも、深く考え込んだ様子で、必ず数秒待っていることに気がつきました。質問が難しくなればなるほど、彼の回答はますます力強く、示唆に富んでいました。

 間をおくべき理由は、主に3つあります。

1 反応し、考え、最良の回答を考えるための時間を稼ぐ
2 沈黙はあなたの回答の重みを増すので、聞き手はより高い価値を感じる
3 劣勢にあるときや緊迫した状況では過剰に反応しやすいため、間をおいて避ける

質問を分類ごとに把握しておくことが、常に聞き手に先回りするコツです。

 例えば、プレゼン後の典型的な質疑応答の場面では、質問はだいたい次の4つ「事実確認のための情報収集型」「発見型」「評価・比較型」「挑戦型」に分類できます(図参照)。


質問の主旨によって4分類し、先回りして回答を考えよう拡大画像表示

 図の一番下にある、事実確認のための情報収集型の質問は、単純なので迅速に回答するべきです。

 事実確認のための質問から、発見型、評価型、最後の挑戦型の質問に移るにつれて、回答にかける時間を増やすよう調整するといいでしょう。適切な見地から回答することができるだけでなく、あなたに対して経験豊かで信頼できるという印象が強まります。各分類ごとに挙げた典型的な質問例を見てみてください。

防戦に回らない!

 気づいた読者もいらっしゃるでしょうが、回答が一番難しいのは、理由や正当性を求める質問です。陥りやすい落とし穴は、防戦に回ってしまうことです。

 あるプロジェクトで、クライアントのオペレーション担当副社長から「(君たちマッキンゼーの担当者は)なぜ工場の現場に出向かないのか?」と手厳しい質問を向けました。

 するとプリンシパルは間を取り、まず相手の言うことはもっともである、とはっきり認めました。そのうえで、プロセスと手法について当方の実行計画を慎重に説明しました。

「お言葉ですが、それを実行するには時間や資源が足りないし、他の利害関係者の承認が必要です」などと反論するのでなく、プリンシパルは建設的な回答をするよう努めていました。彼は「もっと難しい質問には、メールを使わずに、それも正式な会議以外の場面で答えたほうがいい」と後でさりげなく教えてくれました。

 また、その場で100%正しく回答する必要のない質問もあることを頭に入れておきましょう。これをマッキンゼーでは「回避の術(art of evasion)」と呼んでいました。

 難しい挑戦的な質問に対しても、まごつかずに答えられるシニア・プリンシパルを見て、私はいつも感心したものです。これは誰にでも習得できるスキルですが、忍耐力と自信が必要です。確かに、挑戦的な質問をしてくる人は、その場で正しい回答を期待しているわけではありません。あなたが成熟したリーダーとしてひと皮むけるには、相手の本当の望みを見抜けるようになることが肝心です。

 質問にすぐ飛びついて中途半端な解決策を提示するよりも、先送りにするほうが賢明です。これを、ほとんどのシニア・リーダーが得意としていました。彼らはより優れた判断と適切な言い回しを使って、できるだけ好印象を与えるように回答するのです。

 最後の大切なポイントは、「自信」です。

あなたの言葉に説得力をもたらすものは、得てして自分に対する自信です。会議室に足を踏み入れた瞬間から自信に満ちた態度を示すことが、結局一番重要なことかもしれません。