バドミントンは、発祥国のイギリスをはじめとするヨーロッパ各国はもとより、マレーシア、インドネシア、中国など、アジア諸国で人気がある。ワールドツアーの開催地もアジア諸国が多い。それゆえ、日本と比べたら質素な車や施設に慣れている面はあるだろう。だが、そこに落とし穴がなかっただろうか。

 事故に遭って、その日のうちに首相夫人が見舞いに来る。マレーシアにおけるバドミントンの存在感、同時に桃田賢斗という現役世界チャンピオンへの敬意の高さを改めて知らされる。国技であり、バドミントンの王者は国の英雄ともいわれる。

 実際、全英オープンを何度も制したリー・チョンウェイ氏は国民的ヒーローだ。そして、そのリー・チョンウェイ氏もまた、知らせを聞いてすぐ病院に駆けつけた。桃田選手はもはや「ヒーローのヒーロー」といっていい存在なのだ。その桃田選手が、マレーシアで、このような危険な車で移動している不可思議さ。例えばテニスのスター選手たちなら、安全性の高い高級車で移動するのが普通だろう。

事故から浮かび上がった
「競技間格差」「安全意識の低さ」

 今回の出来事から、スポーツ界に存在する「競技間格差」が改めて浮かび上がる。お金のある競技、ない競技、現実に大きな差がある。だからこそ、JOC(日本オリンピック委員会)が全体として予算を確保し、足りない競技に十分な補助をするなどの発想と仕組みが必要だろう。

 また、指導者と選手個々の安全意識を高める必要もある。無理な移動、危険が予想される移動手段の利用を禁じるハングリー精神もある意味で大事だ。ぜいたくは排除していいが、安全や健康には相応のお金をかける意識を徹底することも必要だったろう。高額な賞金を手にしながら、あえて華美を戒めた姿勢があだになったとすれば本当に気の毒だ。しかし、その点は周囲がきちんと指針を与えるべきだった。

 普段の海外遠征時、バドミントンの選手たちは日本選手団として行動する。世界ランク1位、賞金獲得額が年間1億円を超える桃田選手であっても、同じ便、同じグレードの座席で移動する。