天才数学者たちの知性の煌めき、絵画や音楽などの背景にある芸術性、AIやビッグデータを支える有用性…。とても美しくて、あまりにも深遠で、ものすごく役に立つ学問である数学の魅力を、身近な話題を導入に、語りかけるような文章、丁寧な説明で解き明かす数学エッセイ『とてつもない数学』が6月4日に発刊された。

教育系YouTuberヨビノリたくみ氏から「色々な角度から『数学の美しさ』を実感できる一冊!!」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。連載のバックナンバーはこちらから。

古代ギリシャの賢人ピタゴラスの「数秘術」Photo: Adobe Stock

数字にはキャラクターがある!?

 誰でも親しみを感じる数字というのがあると思う。誕生日だったり、昔からなんとなく好きな数字だったり、好きなスポーツ選手の背番号だったり。私は「8」が好きだ。理由は、漢字の「八」は末広がりで縁起がいいからということもあるが、野球少年だったときに大好きだった、ジャイアンツの原辰徳選手の背番号だったことが大きい。

 ちなみに8の1つ前の「7」は、ラッキーセブンと言われ好かれることが多い数である。しかし、私にはどこか孤高の、人を寄せつけないオーラを感じさせる数であり、あまり馴染めないイメージがある。一方、8の1つあとの「9」に対しては、いつも仲良くしてくれるわけではないものの、仲間内では非常に頼もしく、窮地に立ったときにはぜひ助けに来てほしいような心持ちになる。

 私はいろいろな数についてこのようなイメージを持っている。無理やりキャラクターを設定したのではなく、いつの間にか自然にできあがった。こんなことを書くと、変な人、と思われるかもしれない。でも、こうしたことは――聞いて回って確かめたわけではないが――おそらく数字が得意な人皆に共通するはずだ。1つ1つの数に感じるイメージはそれぞれ独特だったとしても、少なくとも「7」も「8」も「9」も印象が同じ、ということはないと思う。

 音楽が好きな人は、演奏の良し悪しを聞き分ける。料理が好きな人は、微妙な塩加減や火加減の違いを味わえる。同じように数字が好きな人は、数字の持つキャラクターの違いに敏感なのである。