スーパーの店舗の「おかしな現状」を主婦感覚で解決、銀行も驚くスピード復活劇

店舗の改善を進めるスーパーマーケットチェーン・タイヨーの清川照美副社長。「現場にこそ答えがある」との信念から、どの店にも躊躇なく出かけ、長年放置され誰も気づくことすらできなくなっていた「おかしなこと」「不思議なこと」を見つけると、すぐに解決した。大事にしたのが消費者の感覚だ。半年で経営は上向き始め、6年半で300億円の返済が実現した。(フリーライター 山本明文)

 どの店舗にも自ら向かった。弁当や惣菜を製造するグループ会社へも足を運んだ。人が足りないと言われれば、自ら製造ラインで作業もした。そこでも気がつくことは多かった。

 弁当の配送時間にも無駄と改善点があることに気付いた。現場では誰もおかしいと思っていなかった。現場が消費者感覚を持つことの重要性を改めて認識した。

 人の育成も意識した。あらゆるところへ足を運びながら、清川氏は、これはと思う社員を抜てきした。秘書としてどこにでも同行させ、外部との交渉の場に同席させた。会議ではプレゼンを任せて自分で調べることを促し、人前で話すことで自信を持たせた。外部との交渉や予算編成をまるごと任せることもあった。

「わが社には能力のある社員がたくさんいらっしゃいます。しかし、学習する機会を与えられず、自ら考えることをしないまま、眠ったような状態になっている人がほとんどでした。その方々に目を覚ましていただき、がんばる人たちを評価したいと思いました。ある人は1カ月が1年に感じられるほど充実していたと言ってくださいました。みなさん特別な経験をして、大きな自信をつけてくれたんです」(清川氏)。

 長ければ1年、短ければ3カ月ほど秘書の仕事をした後、各社員は店へ異動し、副店長や店長として経営者感覚を身につけてもらう。将来は会社をけん引する人材になってほしいと清川氏はいう。これまで秘書を務めた社員は20人ほどにのぼり、自称秘書を入れると40人にもなる。