まるで「導師」のように見える最近のモディ首相 EPA=時事まるで「導師」のように見える最近のモディ首相 EPA=時事

厳しいロックダウンで「第1波」を鎮圧

 2005年の世界保健機関(WHO)報告書に、「20世紀のパンデミックに学ぶ14の教訓」がまとめられている。その第4条にはこんな項目がある。

「ウイルスによる潜在的な感染力は『波』によって違ってくる。1度目に影響を受けなかった世代や地域が、第2波では脆弱になる。そして後へ行くほど深刻になりやすい」。

 まったくこの予言のとおりであった。昨年は軽めの被害で済んでいた日本は、今夏には1日に万単位の新規感染者を数えることとなった。1年目は高齢者が、2年目には若い世代が多く感染した。世界各国を見渡しても、20年と21年の状況は大違いであった。今年に入り、インドで誕生したデルタ株という変異種が全世界で猛威を振るったためである。特に14億人が暮らすインドでは、感染も被害も対策も桁外れのものとなった。

 20年3月、感染の第1波を封じ込めるために、インドのマレンドラ・モディ政権は世界で最も厳しいロックダウンを実施した。公共交通機関はすべて停止し、警察が市民の外出を取り締まった。しかも準備期間なしで実施したため、職を失った出稼ぎ労働者が徒歩で故郷に帰るなどの混乱が生じた。もちろん景気は急速に悪化。20年のGDP成長率は前年比で7.3%減となり、失業率は一時20%を超えた。インドは多大な犠牲を払って第1波を乗り越えた。