共通テストに通じる開成の問題
石田 ちょっと難しそうに見える開成の特徴的な問題もやってみましょう。図3の大問3を見たとき、“えっ”と思うかもしれません。問題文が長い。登場人物に「あけなり(開成)君」が出てきたというのは初めてですかね(笑)。このような長文の問題ではまず、ルールを正しく理解することが大切です。そしてこのことが、中高で学ぶ数学につながります。(1)では最大でいくつマスがぬれるかが聞かれています。このようなときは恐れずに実際に手を動かしてみましょう。
ここではルールが2つあります。一つが、ぬりつぶすマス目は、上下左右が隣り合わないようにすること。もう一つが、このタテA・Bとヨコ1~7の表をひっくり返したりしないということですね。
全部で14個のマス目があります。最大でいくつぬれるか実際にやってみましょう。A1をぬり、次にB2をぬるとやっていくと、図4のようになります。もう一通り、B1、A2とぬっていくパターンもありますね。つまり、(1)の答えは最大7カ所で、暗号は2種類です。このように、応用問題ではまず手を動かしてみることが非常に大事なことです。そして、この問題を解く際、特に前提となるような知識は必要ありませんね。解くための最大のポイントは問題文の意味を正確に理解することです。
この大問3はとてもていねいに作られています。(2)は14個のマス目のうち5カ所だけぬりつぶす場合を求める問題です。まず(ア)では、1列目と3列目をぬりつぶさない。これも実際に手を動かしてみましょう。5列しかぬれないので、図5のようになります。2列目はAかBのどちらか1カ所で2通り、4~7列目で4カ所ですからA4、B5、A6、B7をぬる場合とB4、A5、B6、A7をぬる場合の2通りですので、2×2=4通りの暗号を回答欄に書くことになります。
(イ)は3列目と5列目のマス目をぬりつぶさないケースが聞かれているので、実際にその列に×を付けて考えてみましょう。ここで大切なことが、(1)での経験がどのように生かせるかを考えることです。(1)での経験から、はじめの列でA、Bのどちらをぬるかで場合の数は決まるということに気がついていると、図6のように、1・2列目は2通り、4列目も2通り、6・7列目も2通りとすぐに数えられます。ですから、できる暗号は2×2×2=8種類となります。
このように、最近の問題ではとてもていねいな誘導がついており、その誘導を読み解くことが鍵になる問題が見られます。これは実は大学入試問題にも見られる傾向です。今年の大学入学共通テストの数学の問題が難しいと話題になりましたが、あれも実は、長い問題文から論理の流れを読み取るところがポイントでした。
この問題では、続く(ウ)で、14個のマス目のうち、ぬりつぶさない場所の指定がない条件で5カ所だけぬりつぶす場合が聞かれますが、ここで(ア)と(イ)でやったことが誘導であることに気がつくと、1列目や7列目という端の列をぬりつぶす場合は4通り、そうではない場合は8通り……のようにして容易に答えが出るようになっています。
大問3(3)も、〈図2〉で与えられた3種類のパターンの次の列はどのようになるかを、まず手を動かして書き出す、そしてその作業の中からどういった法則があるかを考えてみることが解法の手がかりになっていました。
図7のように、AB共にぬりつぶさない場合には次の列のぬり方は3種類となります。AかBをぬりつぶした場合にはそれぞれ次の列のぬり方は2種類になります。これが3列目以降にも繰り返されることが取り出せれば、これを7列目まで繰り返すことでぬり方の総数が数えられるわけです。このようにして(ウ)の答えを考えてみてくださいね。
金 難関校では、このように場合分けをていねいにしながら考える問題がけっこう多く出てきます。良い問題でした。