多彩な新校長のキリスト教学校

 ここからは、キリスト教主義の学校について見ていこう。いずれもユニークな人材が新たに校長となっている。

 桜美林学園理事長・学園長の佐藤東洋士氏が急逝したのは2020年10月のことである。同年6月に日本私立大学協会の会長に就任したばかりだった。桜美林大学OBで、学園の中核的な存在だったこともあり、学園内は事後対策に追われた。

 桜美林大学副学長を10年間務めたあと、2013年から9年間にわたって中高の校長を担ってきた大越孝氏の後任には、堂本陽子氏が就いた。神学研究で同志社大学の修士号を持つ日本キリスト教団の牧師で、2003年から中高のチャプレン(学校付き牧師)を務めてきた。こうした例は珍しいが、一挙に若返り、学校のイメージも一新しそうだ。

 昭島市にある啓明学園は、帰国生や国際生の比率が高く、まるでインターナショナルスクールのような雰囲気の学校である。理事長の北原都美子氏(明星元校長、数学科教員)、学園長の北原福二氏(本郷元校長、物理)夫妻が支える中、新校長に迎えられたのが、芝浦工業大学附属の校長を2012年から21年まで務めた大坪隆明氏である。早稲田大学教育学部を卒業後、東南アジアで日本語教育と帰国子女教育に従事。芝浦工業大学に事務職員として入り、就職課長や学事部長などを経て付属校の校長になった珍しい経歴の持ち主である。

 森村財閥創設者でクリスチャンの森村市左衛門が立ち上げた森村学園(横浜市緑区)では、新校長にオーストラリア出身のブレット・マックスウェル氏が就任した。20代で来日して以来、私立高校や公立小中学校などの英語教師を務め、湘南地方で「マックスウェル英会話」というスクールも経営。言語学教育修士号と経営学修士号(MBA)も取得、京都聖母学院小学校、同中高の校長から転じるという、実に多彩な経歴の持ち主である。

 中高一貫校ではないが、東京・小平市にあるサレジオ小学校・中学校にも触れておこう。新校長の北川純二氏は、横浜サレジオ修道院の院長などを務めてきたサレジオ会に所属する神父である。同じ修道会のつながりで、男子校のサレジオ学院(横浜市都筑区)でも宗教教育を担ってきた。

 仏教系の学校はどうか。曹洞宗の大本山・総持寺の学園である鶴見大学附属では、7年間校長を務めた亀山仁氏の後任に、数学科教員で広報部長などを務めた岸本力也氏が就いた。

 鎌倉五山第一位の臨済宗・建長寺の教育施設「宗学林」が前身となる男子校の鎌倉学園は、昨年創立100周年を迎えた。この4月から新校長になった松下伸広氏は副校長からの昇格である。2007年から校長を務めた前任の竹内博之氏は、早稲田大学卒業後、数学科教員として半世紀期近く本校ひと筋だった。この間、2月1日午後の数学選抜入試を導入するなどして、受験者増に寄与している。