算数問題の解答用紙を見ると、その学校の入試の特徴を感じることができる。女子校では例外的に記述式の大問が並ぶ桜蔭の解答用紙(2022年)
算数問題の解答用紙を見ると、その学校の入試の特徴を感じることができる。女子校では例外的に記述式の大問が並ぶ桜蔭の解答用紙(2022年)
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最初で最後の中学入試に向けて

 大手進学塾で長年、中学受験指導に携わってきた経験から、これからの日々にやるべきこと、やってはいけないことについて、確認していきたいと思います。

 まず、1割くらいが当てはまる年内実施の帰国生入試や推薦入試の受験生にぜひ伝えておきたいことからお話しします。年明けの入試を受ける場合、12月下旬から始まる本番直前総合演習や冬期講習などで学力の総仕上げを行います。こうしたものを経ないで受験する皆さんは、普段通りに臨むことを心掛けましょう。条件は皆一緒です。まずは解ける問題を探すことで気持ちを落ち着けてください。帰国生入試を利用しない同じクラスにいる人と比較するようなことは絶対にしないでください。

入吉弘幸
入吉弘幸(いりよし・ひろゆき)
株式会社 Universal Education Planning代表取締役。東京都江東区生まれ。早稲田大学卒。大手進学塾で算数・数学講師として、難関校の中学・高校受験指導に従事する一方、教務部長や執行役員として会社運営にも関与。2022年より現職。オンラインで小学生への算数指導を行うほか、幅広く教育関連活動にも参画している。著書に、『算数ってなんで勉強するの?~詰める力とかわす力~』(論創社)。

 10月中旬のいま、1月以降の一般入試を受験する皆さんは、志望校の過去に出題された「過去問」を解いている最中でしょう。算数や国語に関していえば、過去問とは二度と出ない問題でもあります。では、なぜ過去問を解くのか。各校の出題の傾向をとらえて、入試問題の構成を知り、それに対処する作戦を立てるためです。志望校によっては、必要なものと不必要なものが明確です。家庭での学習では、どこに焦点を当てるかをハッキリさせましょう。

 例年似たような出題パターンの学校の場合はいくつかを経験すればそれで大丈夫です。例えば、豊島岡女子学園は毎年3回の入試があります。5年分だと15回になりますが、それらを全部解く必要はありません。とはいえ、全くやらないわけにもいきません。隣の受験生は必ず解いているからです。

 秋から毎月模擬試験を受けるようになると、そこで出された問題に右往左往することがあります。出題された問題は何でもかんでも解けないと気が済まない受験生もいるかもしれませんが、残された時間は限られています。いまから志望校ではあまり出題されないような苦手(単元)の克服に時間をかけすぎない方がいいでしょう。

 一方で、女子校の場合は特に、苦手な教科をつくらないようにする必要があります。4教科で一つでもリカバリーできないくらい苦手な教科があると、厳しくなります。桜蔭のように算数で多少失敗しても国語がすごくできて合格する例や、豊島岡女子学園のように他の教科がうまくいかなくても算数で満点を取って合格するような例もないわけではありませんが、総じて4教科のバランスが取れていることが、合格するためには必要な場合が多いのです。

 女子校の入試問題には小問数が多いという傾向があります。したがって、苦手なジャンルがあったとしても、ダメージは比較的少なくなります。その克服にはあまり固執せず、他の教科でカバーできるよう4教科での得点という視点を持って臨んでください。この点、共学校にはブレがあります。共学校を一切併願しない受験生はほとんどいないと思いますが、こちらについては、またの機会にお話しいたしましょう。